「とっときのとっかえっこ」
書籍情報
子どもの成長と老人の老いを同時に描いた感動作「とっときのとっかえっこ」
作:サリー・ウィットマン、カレン・ガンダーシーマー、谷川俊太郎
単行本:28ページ
出版社:童話館出版 (1995/04)
発売日:1995/04
商品の寸法:23.1 x 17.3 x 0.8 cm
あらすじ
今度は私が車いすを押す番。それは、とっかえっこみたいなもの。
バーソロミューは、ネリーのお隣にすむおじいさん。
ネリーが赤ちゃんだったころ、毎日ネリーをカートに乗せて散歩に連れていき、歩きはじめるようになると必要なときだけ手をかしてくれた。
やがてネリーは小学生になり、バーソロミューはもっと年をとった。
ある日、バーソロミューは階段でころび、入院。しばらくたって車いすにのって退院してきた。
こんどはネリーが、車いすを押して散歩へいくばん。そうっと、やさしく、ゆっくり・・・。
子どもの成長と老人の老いという時の流れが、季節の移りかわりのように自然に描かれた、心あたたまる絵本です。
オススメポイント
ありのままを受け止め、尊重する関係
何かをとりかえるお話?と思って読んだ絵本。まさかこんなに泣かされるお話だとは思いませんでした。
バーソロミューとネリーはとても仲の良いお隣さん同士。
けれど二人の歳の差は、おじいさんと孫娘ほども離れています。
そんなバーソロミューとネリーの間に育まれる、「信頼」「友情」「おもいやり」を綴ったお話。
成長したネリーと老いたバーソロミューは、ある時を境に役割を入れ替えることになります。
ネリーはそれを「とっかえっこ」といいました。
私はこの絵本を読みながら、数年前、実家の母と交わしたあるやりとりを思い出しました。
母は自宅で祖母の介護をしていました。
私は実家へ帰るたび、子育ての愚痴をもらしていましたが、母から介護の愚痴や弱音を聞いたことは一度もなかったように思います。
そんな母が、いつも通り祖母の食事を用意しながら、何気なく私に話しかけてきたときのことです。
「離乳食みたいでしょう。あなたたちが赤ん坊のころを思い出すわ」
鍋を覗きこめば、食べやすく小さく切られた食材が、ちょうどよいやわらかさに煮込まれています。
母はどこか楽しそうにこう続けました。
「人間はね、赤ん坊から大人になって、また赤ん坊にかえっていくものなのよ」
本当に、そうなのかもしれないと思いました。
娘がまだ1歳になりたての頃、歯が生えそろわない小さな口に、スプーンでひとさじすくって食べさせた離乳食。
着替えをさせたり、歩くときはいつ転ばないかとひやひやしながら常にそばで見守っていた私。
どれもこれも今思えばなんて幸せな時間。
そんな自分たちの姿と、今の母と祖母の姿がどこか重なってみえました。
バーソロミューとネリーがそうであったように、母もまた、生まれた頃にもどっていく祖母のことを、ありのまま受け止め、受け入れていたように思えます。
もしかしたら、子育ても介護も同じなのかもしれないですね。
小さな子どもであっても、年老いた老人であっても、相手を尊重し、おもいやることができたらと思わずにはいられません。
「とっときのとっかえっこ」を読んで、本当の「おもいやり」に出会えた気がしました。
- この記事の先輩ママ:彩子ママ
- プロフィール:
- 絵本や小説、漫画好きな、中学生と小学生の二人の娘の母です。 子どもに読み聞かせたり、ママ仲間からオススメされたりしながら、沢山の本に出会いました。姉妹は既に読みたい本を自分で選べるようになり、今は母子で「オススメ本」の情報交換をしています。
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