思春期に迎えた反抗期の対応・接し方は?親子関係について考える
「私の育て方は問題なかったのだろうか?」
思春期を迎えた子どもをもつ親であれば、一度は考えてしまう疑問です。それほど、思春期の子どもの反抗は、明確で強い意思の表れとなります。
第一反抗期は2歳前後で始まり「イヤイヤ期」などといいますが、10歳前後から18歳くらいにある第二反抗期は、一人の人間としてアイデンティティを確立していくための時期になります。
今回は、思春期に迎える反抗期の対応や親子関係についてお伝えします。
なぜ子どもは反抗するようになる?
この時期になると、子どもは知識も増え、物事に対する思考力も育ってきます。自分自身を含め親をも客観的にみる視点が身についてくるため、これまで当然だったことにも疑問を抱くようになります。
さらに、情報量が増えたことで、自分の環境をもっとよくしたいという改善欲求、新たな何かを生み出したいという創造欲求も強くなります。
ところが、これらの欲求を満たす能力が備わっているかというと、まだまだ経験不足で不完全な状態です。何とかしたい! 何とかしてほしい! といった心の声を、“言える相手”にぶつけることで精神バランスを保つのです。
多くの場合、“言える相手”は親であります。身内だからこそ、言い方も態度も、言動すべてが雑に感じたりすることでしょう。
しかし、この時期の子どもにとって、“言える相手”がいるということは、信頼の証であり、精神的に大きな支えなのです。
反抗しない方が難しい場合も
では、反抗しない子どもの場合はどうでしょうか?
親にとっては、手がかからなくてよかったと思うかもしれません。ただ、この場合はより注意が必要です。それは、子どもが“反抗できない状況”になっていないか?ということです。
思春期は、親に暴言を吐いたとしても、滅茶苦茶なことをやっても、根本的に親との関係は壊れないという自信が子どもにはあるものです。それでも、子どもは無意識に親の顔色を伺っています。
親を意識しすぎるあまり、内に秘めた想いを吐き出せずに、心の深いところで葛藤している場合もあります。誰かに伝えることを諦めて、心を閉ざしてしまうケースもあるのです。
この時期に、内面を外に出せない場合、大人になっても同じようなスタンスで人間関係を築く可能性があります。恋人や同僚などに内面を打ち明けられずに、一人で悩んでしまうかもしれません。
現段階で、親子の関係として、子どもが反抗できるようにしてあげることは大きな意味があるのです。
子どもの感情を吐き出させてあげる、反抗を受け止めることは、子どもの豊かな感性を育む一つの手段なのです。
親としてどう対応すればよい?
“子どもと対話して”とよく言われますが、その前に親がクリアすべき課題があります。それは、子どもの反応を全面的に受け止めるスタンスが備わっているかどうかです。
ご自身が思春期だった頃、親をどんな風に思っていたでしょうか? 親自身にとっても、今が絶好の振り返りのチャンスなのです。
親に正直に言ったことで頭ごなしに叱られた、素直な気持ちを相談したら笑われた、話を聞いてもらおうとしたけどスマホばかり見ていた…
子どもの意見を聞く“ふり”をして、自分の考えを押し付けていませんか? 子どもの考えを善悪で判断していませんか?
子どもときちんと向かい合って、落ち着いて話を聞いてあげるだけでも子どもは安心します。
まずは子どもの言っていることを素直に受け止めるというスタンスが重要です。
事前に環境をつくり、一緒に成長する
思春期は、単に反抗的な態度をとる子どもだけではありません。集中して疑問をぶつけてくる子もいれば、親と対等にディスカッションしたがる子どももいます。
普段から、意見を言い合ったり、コミュニケーションがとれていれば、何らかの衝突が生じた際にも上手に乗り越えられます。対話が少なめの家庭でも、要所で子どもから相談されたり、反抗的な態度で感情をぶつけてくれる場合は、葛藤が生まれた時にもうまく向き合うことができます。
そのためには、日頃から子どもの考えや意見を素直に受け止めてあげることが極めて重要です。頭ではわかっていても、つい口がでちゃうという親御様も多いでしょう。時にはそれでもいいのです。
大人だって、いつまでも成長の途中、完ぺきではないんです。もっと肩ひじ張らずに、そんな親の葛藤も子どもに伝えてみましょう。
今、悩みながら進んでいるこの時が懐かしくなる時がきますよ。
医師、医学アドバイザー 橋本佳子プロフィール
久留米大学医学部卒業、内分泌代謝内科学講座入局。幼少期に母親がI型糖尿病を発症。父親とともに長年に渡る闘病生活を支え続けた経験から、心と体の繋がりについて深く学び、医学的な治療方法だけでなく、心との向き合い方について幅広い視点からアドバイスを行っている。 【経歴】:医療法人水聖会メディカルスキャニング浜松町にて院長を務めたのち、東京医科大学病院にて糖尿病内科医として勤務。現在は、ピュアライフメディカルクリニックにて治療に携わっている。