思春期に多い頭痛やめまいなどの体調不良ー考えられる原因と対処法は?
思春期の子どもは、体も心も成長し、大人になる準備をしています。学校生活も忙しくなるほか、友達や家族との人間関係も複雑になります。
なかには、頭痛やめまいなどの体の不調を訴える子ども少なくありません。
そこで今回は、思春期におこる頭痛やめまいなどの体調不良について、考えられる原因と対処法をお伝えします。
思春期と頭痛の因果関係は?
思春期の子どもが頭痛を訴えた場合、これは思春期に特有の原因があるわけではありません。体が急成長しているために起こっているわけでもありません。
多くの場合は、ストレスや疲れなど精神的なものからきています。
ただし、頭痛がひどくて起き上がれないなど、様子がおかしい時は、内科や精神疾患が隠れていることもあります。
「頭痛は思春期によくあること」と自己判断せずに、日頃から親がよく子どもをみておくことがポイントになります。
頭痛が起こる原因と診断
頭痛が起こる原因は人それぞれですが、おおよそ大人と同じような形態で以下の3つのパターンが多くなります。
片頭痛(偏頭痛)
頭の側面がズキンズキンと痛むものです。ホルモンの影響もあり、女性に多いタイプの頭痛です。思春期に発症すると、大人になってから頭痛もちになることが多いと言われています。
緊張型頭痛
肩や首筋など体の固まり、コリが原因となって頭が重苦しく痛む頭痛です。思春期では、学校や塾で勉強、自宅でも受験勉強、スマホにパソコンの利用と、長時間同じ姿勢で目や頭を使うことが増えます。これによって、緊張型頭痛が発症することが多いです。
精神疾患からくる頭痛
精神疾患、特に統合失調症やうつ病などの場合に頭痛を発症することが知られています。最近では、“起立性調節障害”といって、頭痛のほか、別の症状も現れるなど子どもに特有の障害があることもわかってきました。
上記いずれのケースも、回数が多い、痛みがひどい、他の症状も併発しているなど、おかしいなと思ったら医療機関を受診することが重要です。
特に、思春期の精神疾患の場合は早期治療が効果的です。最近では、頭痛外来、思春期外来など、専門的な外来もありますので参考になさってください。
めまいや倦怠感・体調不良は自律神経失調症の可能性も
頭痛だけでなく、めまいや立ちくらみ、食欲不振や下痢、便秘、倦怠(けんたい)感など体調不良が続く場合は、自律神経失調症の可能性があります。
医療機関で血液検査や脳検査などで原因を確認してから診断をうけることになります。受診してはじめて、“貧血だった” “うつ病だった”ということがわかり、原因がハッキリして安心する親御様も多いものです。
先ほども触れましたが、思春期によくみられる自律神経失調のひとつとして「起立性調節障害」が注目されています。
頭痛やめまいだけでなく、朝起きることができずに学校に不登校、引きこもりになる子どもいます。体の急激な成長に、自律神経の成長が追いついていないこともありますが、精神的なダメージも関与するといわれています。
例えば、引きこもりの場合は、朝起きれないという原因の陰に、親の期待にこたえるのが辛い、友達関係に疲れたという心理的な要因が潜んでいることも多いのです。
身体面と心理面を合わせて、ゆったりした気持ちで治療に臨むことが必要になります。
親がしてあげられること
思春期の子どもは、精神的に不安定になることも多く、親を疎ましく思うものです。それも成長の過程ではありますが、親が何もしなくてよいというわけではありません。
親ができる最大のことは、“家庭を安心して過ごせる場所”にすることです。子どもが話したい、聞いてほしいと思ったら、いつでも話せる環境を作ってくことなのです。
そのために、まずは次の3つのことをおススメします。
当たり前の生活をより大切に
美味しいご飯、たまには子どもの好物も準備してあげる。夫婦仲、義両親との仲など家族を大事にする、整理整頓するなど一般論として理解できることでも今まで以上に大切にしてみましょう。
愛情表現をし続ける
どんなときも子どもの味方であることをメッセージとして伝えるとよいでしょう。そのような会話にならない場合でも、子どもが話してきたときは、子どもの意見や考えを素直に聞き入れる、一旦はすべてを受け止めるという態度が重要です。
変化に気づいてあげる
ガミガミ言わずに、子どもを温かく見守ることが基本ですが、親の重要な役割として常に子どもを観察することがあります。干渉ではなく“観察”がポイントです。そして、子どもの変化に気づいてあげることが大切です。
やりきれない時もあるかもしれませんが、そんな時こそ深呼吸をとりいれましょう。子どもと一緒にいるときに深呼吸するのもよいアイデアです。思いのほか効果があり、気分もその場の空気もよくなりますよ。
医師、医学アドバイザー 橋本佳子プロフィール
久留米大学医学部卒業、内分泌代謝内科学講座入局。幼少期に母親がI型糖尿病を発症。父親とともに長年に渡る闘病生活を支え続けた経験から、心と体の繋がりについて深く学び、医学的な治療方法だけでなく、心との向き合い方について幅広い視点からアドバイスを行っている。 【経歴】:医療法人水聖会メディカルスキャニング浜松町にて院長を務めたのち、東京医科大学病院にて糖尿病内科医として勤務。現在は、ピュアライフメディカルクリニックにて治療に携わっている。