宮里藍プロフィール
家族に襲いかかった逆境を、家族の絆、ゴルフで乗り越えた
反骨精神──。
一言でいうと安易だが、その父親ゆずりの強い精神力が、宮里藍にも、しっかり受け継いでいる。
やがて、宮里藍はじめ、宮里家の3人兄妹は、プロゴルファーとなり、その活躍ぶりが、報道されるようになった。すると、それまで冷遇していた村人からも声援が送られてきた。
現在、過疎の村・東村の税収の3分の2をおさめているのが、宮里藍を中心にした宮里一家だといわれている。
「藍が、結婚しても、東村に住民票を残す」
と、語っている優さん。
その背景には、こんな思いがあると、優さんの友人が語る。
「あれだけ冷たい仕打ちを受けたけど、藍ちゃんの兄たちが県外に出るときに、村の育英資金を借りたことがあった。そんな藍ちゃんたち三兄妹は、村にお世話になったんだから、稼いだ分は村に納税させるというのが、優さんの考え。だから、住民票をそのまま東村にしているんです。優さんはそういう人です」
家族に襲いかかった逆境を、家族の絆、ゴルフで乗り越えた──
宮里家。選挙落選の代償は大きかったかもしれないが、それ以上に、大切なものを、手に入れた。
沖縄県・東村をまわっていると、ススキの穂のような、花をつけた植物が群生していることに気がついた。その植物は、ススキよりも背が高く、花も大きく、空に向かって咲いていた。
「あれはサトウキビの花さ。真っすぐに伸びて、花を咲かせたサトウキビはとても甘くて美味しいのさ」
パイナップル畑にいた初老の男性が、農作業の手をとめて教えてくれた。
台風の多い沖縄、そしていつも太平洋からの強い風が吹きつける東村。
それらの烈風に負けずに真っすぐに伸びるサトウキビ──。
宮里藍の姿が重なった。
世界の大舞台に立っても動じないように見える宮里藍。そんな彼女でも強風に吹き飛ばされそうになったことがある。それが小学校のときにうけたイジメである。
1クラス16名。そんな小さなクラスに起こったイジメは些細なことから始まった。
「イジメは、友達を取った、取られたみたいな小さなもの。小学1年から6年間ずっと16人が一緒のクラス。姉妹ケンカみたいなものですが……、藍ちゃんは相当傷ついていた……」
とは宮里の友人。
最初は、友達の取り合いによりクラスが二分になった。しかし、その後、徐々に宮里藍が孤立していった。ゴルフのジュニア大会で活躍し、天才少女と呼ばれる宮里に対しての妬みもあったのかもしれない。
そのことに悩んだ彼女は、父の枕元に手紙を書いた。
《友達からいじめられている。無視されてとてもつらい。学校に行くのがいやでたまらない》
娘の悩みを知った父親の優さんは、「親として一生懸命、対処することが大事だ」と、徹夜で、こんな手紙を返したという。
《お父さんから見れば、藍は心の温かい優しい子。そのままの藍を受け入れてくれる子はいくらでもいる》
また母親の豊子さんもこうアドバイスした。「藍が心を開けば相手も変っていくよ。いつまでも言い返していたら平行線だよ」
【参考図書『宮里藍ドリームショット』(毎日新聞社刊)】
「その後、藍ちゃんは、学校のスピーチ大会で、イジメの体験を発表しました。辛い体験だったかもしれないけど、それを語ることで、イジメと正面から向き合い、悩みを克服しようと両親と相談したようです。
イジメはすぐになくなりました。「なんであんなことになったんだろう」っていうくらい、元の仲良しクラスに戻りました」(友人)このイジメは父親の優さんも、インタビューで「一番苦しかった」と語っているように、宮里藍に吹きつけた、強い、強い風だった。それを家族一丸となって、乗り越えた。
この経験で、宮里藍は強じんな家族の絆を自覚し、さらに度量の広さを身に付けさせたという。そして、そう、海から吹きつける風を受けても、強風吹き荒れる台風が来ても倒れずに真っすぐに伸びるサトウキビのような強さを……。
インタビュー目次
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