大蔵喜福プロフィール
1951年 長野県飯田市に生まれる 1965年 本格的登山を始める 1971年 ヨーロッパアルプス初挑戦 1979年 世界初のヒマラヤ縦走登山 (ダウラギリV~III~II 峰7,000m峰3山縦走) チョモランマ北壁に2度挑戦。打ち立てた厳冬期最高到達地点記録(8,450m)は、いまだ破る者はない。 マッキンリー18回登頂や、カヌーでの瀬戸内海初横断などユニークな記録も持つ。多くの登山仲間を亡くした冬の北米大陸最高峰マッキンレーを調査するために気象観測装置を設置し毎年登頂。貴重なデータを集めた功績で秩父宮記念山岳賞を受賞。日本山岳会自然保護委員会やHAT-Jなどでも理事を務め、山における環境保護の問題にも取り組んでいる。
子供たちに伝えたいこと ~学力より情操教育~
- のっぽくん
- チョモランマでの厳冬期最高到達地点記録など、ご自身で数々の登頂記録をたてられてこられましたが、子供に自然を体験させることにベクトルが向うようになったキッカケは何だったのですか?
- 大蔵さん
山に行くにはお金がかかるので、私も仕事としてテレビや雑誌に出演したり、人を山に連れていってあげたりと、いろいろしてきました。
そうすると、それまでは自己満足の世界でしたが、今度は人との触れ合いが面白くなってくるんです。
人が変わっていく様子を見たり、喜んでいる様子を見たりする楽しさは、全く別物ですね。
例えば、この写真はアコンカグア(アンデス山脈・南米最高峰の山 6962 m)に登ったときの写真ですが、60代の方々を連れて登ったわけです。
どんなに偉い人でも、山にきたらみんな一緒。登り始めは頼りなかったのが、登った後では、自信もつきますし、本当に別人のように変わって面白いですよ。そして、嬉しい- のっぽくん
- そういう意味では、子供はもっと変わりますね。
- 大蔵さん
子供は、柔軟だし真っ白だから、もっと面白い。
やっぱり、綺麗な山や川に連れて行きたいですし、この自然を守りたいと思いますから、子供たちにも分かってもらいたいと思います。
昔は、山や川が好きな先生がいて、生徒たちをプライベートで連れていってくれたりしましたが、今はリスクを考えてしまって、そういうことをする先生が本当に少ない。
私は、幼いころから学力を追求するより、情操教育に力を入れるべきだと思います。
小さい頃は、自然と触れ合ったり、絵画を観たり、本を読んだり、音楽を聴いたり、いろんな体験をしたほうが良い。
自然は、水や空気と全く同じで、なくなったら我々は生きていけませんので、もっと小さい頃から自然を深く知ってもらいたいと思いますね
マナスルの頂上にて
大きく変わる子供たち ~山は、どんな子供もまっとうにする~
- 大蔵さん
先日、子供たちを連れて、何パーティかで山に登ったとき、天気が悪くなって、ようやく途中の山小屋に辿り着いた。
かなりきついけど、そこから先は、行きたいという強い意志を持った人だけでいくから、行けるやつは手を挙げろと言ったんです。
希望者だけで頂上まで行って戻ってくると、端のほうで泣いているやつがいる。
どうして泣いているのか聞いてみると、『ここまできて、手を挙げられなかった自分が情けない』と泣いてる。
自分自身を知る作業でもあるわけですから、そういうのが良い経験になるんですよね。
逆に、頂上まで登りきれると、さらに大きな自信になります。
そこに至るまでの苦しい道のりを思い出せば、何でもできると思える。
山は本当に厳しいですから、山へ連れていけば、どんな子供もまっとうになれると思います。- のっぽくん
- やはり、頭の中だけで考えるのと、実際に体験するのでは、大きく違うんですね。
- 大蔵さん
特に、子供のころはそうですよね。
子供は、大人の言動をよく見たり聞いたりしていて、私が何気なしに言ったことが、子供の心に残っていたりします。
昔、高尾山で子供たちと活動しているときに、急に天気がおかしくなってきたので、私は確信があったわけではないんですが、経験上『もうすぐアラレが降るぞ!』って言ったんです。
そうしたら、本当に大粒のアラレが降ってきた。笑
傍にいた小さな子は、尊敬のまなざしで私を見るわけですが、なんとそれがキッカケで、その子は気象関係の仕事に就いて頑張っています
インタビュー目次
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