上野義雪プロフィール
千葉工業大学工学デザイン学科 助教授
日本人は椅子を使い始めてから100年しか経っていない
- のっぽくん
- 集中力と学力の話がでましたので、子供が使用する頻度が高い学習机についてお聞きしたいのですが。どのような机、椅子が子供にもっとも適しているのですか?
- 上野義雪
- 「学習机の話をする前に……。そもそも椅子に座ると、楽だと思っていること自体が、まず間違いだということです。人間の構造を考えると、立っているよりも、背骨のゆがみが腰、骨盤に直接くる椅子に座っている姿勢のほうが、身体には負担がかかっているのです。
人間の頭部は、体重の5?6%と言われています。そのような重い頭を身体全体で支えるために背骨は(横から見たら)S字形になっているのです。しかし、椅子に座ると、背骨はアーチ型になってしまうのです。
重い頭を上半身だけで支えるのは腰に大きな負担がかかります。そのため人間は自然に骨盤を後ろに持っていき、なんとか腰部への負担を軽減しようとします(つまり背骨をS字型に近い形にする)。これが身体の構造からみたら苦痛なのです。
まず座るという行為が、実は身体に負担がかかるものだということを覚えておかなければいけません。」 - のっぽくん
- 身体にとっては、座っている方が苦痛だとは驚きです。
- 上野義雪
- 「そうです。まして日本人は椅子を使い始めてから100年しか経っていないのです。日本人の身体には床や畳とのつき合い方は染みついていますが、椅子との関係でいえば経験は少ないので、本当の意味での善し悪しが、よく理解していないのです。だからこそ椅子はきちんとした物を選び、正しい使い方をしなければならないのです。
- のっぽくん
- それではどのような学習机や椅子を選べばいいのですか?
- 上野義雪
- 「昔の学習机は、椅子、机とも、高さが調整できましたが、今の机は、ずっと使い続けることを前提にしているから70センチで固定されています。
その机に合わせた高さの椅子を使うとなると、小学低学年では、脚がブラブラしてしまいます。そのために最近では椅子に足掛けをつけているものが多いのですが、足掛けでは充分に姿勢は変えられない。座り直しもできない。これではあまり意味がないのです。」 - のっぽくん
- 座り直したり、姿勢を変えたりした方がいいのですか?
- 上野義雪
- 「人間は動く動物です。同じ姿勢のままでいてはいけません。ましてや座ること自体が身体に負荷をかけているので、ずっとその姿勢を続けていることは身体によくありません。いくら正しい姿勢だとしても脚を動かしたり、腰をずらしたりして、座り変えすることが大事なのです。
本来、身体のためを考えたら、椅子に30分ほど座ったら、立ち上がって、ストレッチ運動などをするのがいいのですが……。しかし、そうもいかない。
それならば、少なくともしっかり踵を床につけて、座り直したり、脚を前後に動かしたり踵を上げ下げることが大切です」 - のっぽくん
- 机よりも椅子が大事になってくるわけですね。
- 上野義雪
- 「子供のことを考えるのなら、机、椅子ともに、高さ調整ができるタイプがいいでしょう。注意しなければならないのは椅子の高さです。まず座ったときに踵が床に着いていなければいけません。また座面の奥行きも必要で、深く座った状態で、ヒザ裏とイスの間に指2本分の隙間があれば理想です。さらに腰をサポートする背もたれも、高さ同様に、自然に身体が調整していく上で、重要なものなのです。
さらに子供の姿勢を考えたら、机の真ん中で勉強するのではなく左右に動いた方がいいので、机の下に広い空間があったほうがいいのです。そのため引き出しなどがない方が好ましいでしょう。どうしても必要ならワゴンタイプにし、出し入れすればいいのです。」 - のっぽくん
- なるほど。学習机など、どうせ子供はすぐに大きくなるのだからと、安易に選んではいけないのですね。
- 上野義雪
- 「さきほども話した通り、そもそも日本人はイスの生活が身についていないのです。トイレにしろ、畳での生活もそうですが、日本人は関節を曲げる文化を持っていました。つまり椅子のない生活を長い間、してきました。
そのため上手な座り方というのは、まだまだ未熟なのです。
本来、座ることが目的なのに、デザインや価格、さらには色などで椅子を選んでしまうのも、その未熟さの現れでしょう。」
インタビュー目次
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