保湿剤は効果なし!?乳児のアトピー性皮膚炎と保湿剤について
乳児期から発症するとして知られているアトピー性皮膚炎は、命を脅かすような病気ではありませんが、なかなか完治することが難しいため、長期的に症状に悩まされる病気です。
だからこそ、乳児期からスキンケアに気を付けている親御さんは多いでしょう。
そんな中、ノルウェーで行われた研究では、「保湿剤によるスキンケアは乳児期のアトピー性皮膚炎発症を抑制しない」という結果が明らかになりました。
アトピー性皮膚炎とは
「皮膚が痒くなる」というイメージが浸透しているアトピー性皮膚炎ですが、具体的には「痒みのある湿疹が慢性的に良くなったり悪くなったりを繰り返す病気」であり、一時的な湿疹などはこれに含まれません。
そのため、生後1歳未満では2カ月以上、1歳以上であれば6ヵ月以上症状が継続していればアトピー性皮膚炎と診断されます。
薬物療法やスキンケアなど正しい治療を受けることで症状が出ないようにすることは可能ですが、一方で、乳児期にアトピー性皮膚炎を発症した子どもは、その後も気管支喘息やアレルギー性鼻炎になりやすいと言われいるため、乳児期におけるアトピー性皮膚炎の発症抑制は非常に重要です。
保湿剤の使用は生後12ヵ月時点での発症抑制に効果なし
今回の研究では、2015年4月14日~2017年4月11日に誕生した新生児2,397例を対象にして、スキンケアに関して具体的なアドバイスをしない対照群と、生後2週以降にバスオイルとフェイシャルクリームを使用するスキンケア群などのグループに分けて検証を行いました。
その結果、生後12ヵ月時点におけるアトピー性皮膚炎の発症率は、対照群で8%、スキンケア群で12%と有意な差はなく、早期からの保湿剤によるスキンケアによるアトピー性皮膚炎の発症抑制効果は認められませんでした。
治療目的の皮膚軟化薬は効果あり
今回使用したバスオイルやフェイシャルクリームといった保湿剤では効果を認めることはできませんでしたが、治療目的で処方される皮膚軟化薬については有効性が裏付けられています。
発症予防効果は確立されていませんが、赤ちゃんのデリケートな肌を乾燥などの外的刺激から守るためにも、保湿剤を使ったスキンケアを継続すると共に、皮膚トラブルを見つけたら早めに医療機関を受診することが大切です。
参考URL
『メディカルトリビューン』https://medical-tribune.co.jp/news/2020/0314524609/
『小児アトピー性皮膚炎ハンドブック』
https://www.erca.go.jp/yobou/pamphlet/form/00/pdf/ap024.pdf
スクスクニュースの過去記事も合わせてご覧ください。
遺伝だけではない!?小児アトピー性皮膚炎を長引かせないためには
https://www.suku-noppo.jp/headline/20190306- MR(医薬情報担当者):編集部スタッフ:古谷祥子