ペット犬、子どもの心身機能に好影響の可能性
少子高齢化が深刻な我が国ですが、実のところ子どもの数よりもペットの数の方が多くなっているというのをご存知でしょうか?
特に、犬に関しては人間に対して忠実ということだけでなく、視線を通わせることでオキシトシンと呼ばれるホルモンを分泌させることができるということから、アニマルセラピーの面でも期待が高まっています。
そんな中、麻布大学の研究により、ペット犬が子どものメンタルヘルスを改善させるということが明らかになりました。
オキシトシンは心身に重要なホルモン
もともと、犬と人間は約3万年も前から共生してきた歴史を持ち、そのため最も人の気持ちに寄り添うことができる動物は犬であるという考えもあるほどです。
実際に、犬が人間と見つめあうことで、互いのオキシトシンの分泌量を増加させるという研究結果も報告されています。
オキシトシンとは、脳にある視床下部という部位から分泌され、不安や緊張の軽減、ストレス解消や整腸機能、ひいては絆や信頼関係の形成に効果をもたらすホルモンです。
一般的には「幸せホルモン」とも呼ばれており、家族や恋人、友達などとのスキンシップや感動的な場面で分泌されることが多いと言われています。
初めて子どもに対する犬の効果が実証された
従来の研究は成人が対象となっていましたが、今回の研究では、初めて子どもを対象として、犬を飼うことによる心身機能の変化を検証。
具体的には、犬を飼っている群と飼っていない群合わせて2,584人の子どもの、10歳と12歳の時点でのwellbeingスコア(WHOが定める、身体面・精神面・社会面全てにおける健康を定義した状態の指標)を調査しました。
その結果、両群ともに12歳時点の方がwellbeingスコアが低下していたものの、犬を飼っている子ども達の方が、そうじゃない子どもに比べて有意にスコアの低下が抑制されていたのです。
ちなみに、猫を飼育している子ども達には、同じような結果が表れなかったため、メンタルヘルスに好影響を与えるのは犬だけであるということも分かりました。
不登校やイジメなどの問題にも活躍期待
今回の研究により、不登校やイジメ、拒食症などで心身に悩みを抱える子ども達に対しても、犬の飼育が良好な効果を与える可能性が見い出されました。
もちろん、もっと具体的な実験研究が必要ではありますが、子どもの健やかな成長と精神発達を助ける存在として、今後ますますペット犬の需要は高まっていくと言えるでしょう。
参考URL
『メディカルトリビューン』https://medical-tribune.co.jp/news/2020/0710530860/
『アニドネ』https://www.animaldonation.org/environment/domestic/database_jppet/
- MR(医薬情報担当者):編集部スタッフ:古谷祥子