乳児期だけじゃない!授乳期間は思春期にも影響
母乳哺育には、赤ちゃんの免疫機能を高めたり、母親の幸せホルモン分泌を促進したりするといった数多くのメリットがある、ということは以前からよく知られていることです。
こうした母乳のメリットのほとんどは乳児期に関係するものでしたが、今回東京大学の研究により、「授乳期間が早期思春期の子ども達の感情的行動にも影響を与える」ということが明らかになりました。
母乳哺育期間が脳神経の発達にも影響
東京都在住の10~13歳、いわゆる早期思春期にあたる207人の子どもを対象にした今回の研究では、母子手帳に記載された母乳哺育期間と早期思春期の脳の構造、それに伴う感情的行動の関係を調査しました。
脳の構造についてはMRI検査を行い、情動や動機付などに影響を与える脳の眼窩前頭前野(ぜんとうがんかや)と呼ばれる部位の体積を測定。
感情的行動については子どもの行動上の問題、不注意・多動性などを評価するSDQスケールというものを用いて評価を実施しました。
その結果、母乳哺育期間が長ければ長いほど、眼窩前頭前野の体積が大きいという結果が明らかになり、更には、母乳哺育期間が早期思春期における感情的行動にも影響を与えるということが分かったのです。
卒乳・断乳を焦る必要はない
今回の研究を通して、母乳哺育期間が乳児期だけでなく、成長した早期思春期における感情的行動や脳神経の発達にも影響を与えるということがわかりました。
しかし、そうは言っても様々な事情で人工ミルクを与えるケースもありますし、人工ミルクでも十分に栄養を取って成長できることは事実です。
「母乳でなくてはならない」ということはありませんが、もし今、卒乳や断乳の時期を悩んでいる方がいれば、そんなに焦る必要はないかもしれません。
日本独自の母子手帳、もっと活用しよう
ちなみに、今回の研究のキーとなったこの母子手帳、実は日本発祥のシステムであるということをご存知でしょうか?
世界的に見ても、妊娠期から幼児期までの発育経過や病歴などを1冊で管理できる母子手帳のようなシステムは他になく、非常に優れていると評価されています。
乳幼児期のお子さんがいる方は、記入漏れがないかなど今一度確認する、既にお子さんが大きいという方も、病歴やワクチン接種歴などを再確認するなど、改めて母子手帳を活用してみてもいいのではないでしょうか?
参考URL
『メディカルトリビューン』https://medical-tribune.co.jp/news/2020/0917531686/
- MR(医薬情報担当者):編集部スタッフ:古谷祥子