ゲーム障害の実態~家族に求められること~
2019年5月、世界保健機構により「ゲーム障害」が疾患として登録されて以降、日本でもゲーム障害やその治療法についての理解が広まりつつあり、特にコロナ禍以降はニュースなどでも取り上げられることが多くなりました。
そこで今回は、第117回日本精神神経学会で報告された内容を基に、ゲーム障害の治療の難しさ、そして、患者家族が理解しておきたいことをご紹介します。
オンラインゲームが引き金に
従来のオフラインゲームは、一度クリアしてしまえばそこで一旦終了。ゲームをやりこむとしても限界があるので、飽きてくるというプロセスを取ってしました。
しかし、オンラインゲームではプレーヤー同士がリアルタイムで繋がり、ゲームフィールドも無限に広がっているため、知らない間に依存状態に陥ってしまい、日常生活に支障をきたすほどのゲーム障害を引き起こすと言われています。
患者の65%は中高生
今回の学会で大阪市立大学病院が報告した内容によれば、同病院のゲーム障害専門外来を受診した患者の平均年齢は15.8歳で、約65%は中高生が占めていました。
中には小学生の患者もいますが、こうした若年患者の特徴として「自分がゲーム障害を患っている」という病識がないということが挙げられます。
したがって、治療の動機付けが難しく、正しい治療効果を得られない、治療継続ができないというケースも多いようです。
ゲーム障害の治療法としては、ゲーム機器を取り上げるなどしてゲームを一切禁止する「断ゲーム」と、ゲーム時間をコントロールする「節ゲーム」の2つの方法があります。
しかし、病識のない子どもに治療を行った場合、断ゲームをしても家族の財布からお金を取って新しいゲーム機を買ってしまったり、部屋にこもるようになってしまったりなど、更なる問題を引き起こしてしまう可能性も。
また、節ゲームをしても「家族にゲーム時間を延長するように働きかけてほしい」と医師に泣きつき、患者と家族の間のパワーゲームに医師が巻き込まれてしまうケースもあり、ゲーム障害治療の難しさを物語っています。
家族の理解が大切
子どもがゲーム障害と診断された場合、ゲームが諸悪の根源のように考えがちですが、そこに至るまでには別の問題が隠れていることも多いです。
例えば、いじめや受験のストレス、父性の機能不全や子どものへの過度な期待といった問題が原因となることもあります。
子どものゲーム依存が気になる場合は、すぐにゲーム=悪とみなすのではなく、子どもとの関わり方や家庭の在り方を見直すチャンスと捉えてみてもいいのかもしれません。
参考URL
『メディカルトリビューン』
https://medical-tribune.co.jp/news/2021/1004538959/
https://medical-tribune.co.jp/rensai/2018/0926516193/
- MR(医薬情報担当者):編集部スタッフ:古谷祥子