全ての新生児に聴覚スクリーニング検査を〜現状と今後の方針〜
赤ちゃんを産むと、多くの産院では入院中に新生児の聴覚スクリーニング検査を実施します。早期に先天性の聴覚異常を発見するために重要な検査である一方、実はその実施率は100%ではありません。
そこで今回は、子どもの先天性聴覚障害とスクリーニング検査の実態についてご紹介します。
発症率は意外と高い
聴覚障害と一口に言っても、耳のどこの部位に障害があるのか、聞こえづらさの程度などによって様々な種類がありますが、先天的に耳の聞こえに何らかの障害を持つ赤ちゃんは、1000人に1人の割合で生まれてきます。
これは先天性異常症の中でも比較的高い発症率であり、先天性聴覚障害は決して稀な病気ではないと言えるでしょう。
原因は約60〜70%が遺伝性で、耳に入った音を電気信号として脳に伝達するまでの遺伝子になんらかの異常があると考えられています。
残りの30〜40%は非遺伝性によるもので、例えば妊娠中の風疹などの感染症、外傷や薬剤などが原因となって先天的な聴覚障害を引き起こします。
スクリーニング検査がなげれば見過ごされる可能性も
聴覚障害は目で見て分かるものではありません。
痛みがあるわけではないので、赤ちゃんが泣いて訴えるようなこともなく、スクリーニング検査がなければそのまま見過ごされてしまうというケースも。
多くは3歳児健診で言葉の遅れを指摘され、その時に聴覚障害が判明するようですが、出来るだけ早期に発見し、適切な聴覚支援や言語発達援助をうけた方が、子どもの将来的な言語機能は向上すると考えられています。
これは子どもと家族の生活の質の向上にも関わることなので、先天性聴覚障害には早期発見と早期治療介入が重要であり、そのためにも新生児のスクリーニング検査の徹底が必要なのです。
新たな基本方針案に期待
現在、新生児の聴覚スクリーニングの実施状況には地域差が大きく、そこには公費負担の金額の違いなども関係しています。
全額公費負担をしてくれる市町村もあれば、一部や上限額が設定されている地域もあり、産院によっても金額が異なるというのが現状です。
今回厚生労働省が発表した基本方針案によると、スクリーニング検査の公費負担を推進し、生後1か月までに全ての新生児の検査を実施。難聴が疑われた場合は生後3ヵ月までに精密検査を行って早期治療と療育に繋げるという内容でした。
今後、全ての赤ちゃんに聴覚スクリーニング検査が実施され、必要な治療と支援を受けられる体制の整備が期待されます。
参考URL
『讀賣新聞』
https://www.google.co.jp/amp/s/www.yomiuri.co.jp/medical/20211210-OYT1T50102/amp/
『鹿児島市』https://www.city.kagoshima.lg.jp/boshihoken/choukaku.html
『メディカルノート』https://medicalnote.jp/diseases/先天性難聴
- MR(医薬情報担当者):編集部スタッフ:古谷祥子