母乳バンクの普及を目指して~現状と展望~
母乳バンクをご存知でしょうか?
寄付してもらった余剰分の母乳を、母乳を必要としている赤ちゃんに提供する機関のことです。日本でも少しずつ普及してきており、今月には静岡県に初めてのドナーミルク登録機関が誕生しました。
そこで今回は、母乳バンクの現状と今後の展望についてご紹介します。
世界中に広まる母乳バンク
母乳バンクの歴史は古く、100年以上前にヨーロッパのウィーンに初めて誕生した施設が始まりです。現在は50か国以上の国と地域に750か所以上設置されており、寄付された母乳、いわゆるドナーミルクを低温殺菌処理して冷凍保管しています。
そして、超早産もしくは体重1500g未満の極低出生体重児の赤ちゃんが、お母さんから母乳をもらえない場合に医療機関の要請に応じてドナーミルクを提供する役割を果たしています。
母乳バンク普及の壁
できるだけ沢山のドナーミルクを必要としている赤ちゃんに届けたいところですが、実際には余った母乳をバンクに寄付するまでにはいくつかの手続きが必要です。
まず、母乳を提供するお母さんは母乳バンクにドナー登録をします。そして、登録後に該当施設でスクリーニング検査を受けなくてはいけません。
この検査結果に問題がなければ母乳を寄付することができますが、問題はスクリーニング検査とドナー登録を受け付ける施設がとても少ないということ。
今までは東京都や京都府といった限られた地域でしかドナーの本登録をすることができませんでした。
そんな中、ドナー登録をしたいというあるお母さんの願いが届き、静岡県ではつい最近県内初めてのドナー登録施設が誕生しました。
しかし、各県に1つずつ登録施設を設置するまでには、まだまだ時間がかかるというのが現状です。
実際、母乳を提供したいけれど登録施設が遠方で現実的に難しいというケースは多く、この状況が母乳バンク普及の壁になっています。
5000人の赤ちゃんが待っている
日本ではドナーミルクの提供が始まった2013年以来、700人以上の新生児に母乳バンクからドナーミルクが届けられています。
しかし、実際にはドナーミルクが必要な新生児は年間5000人誕生しており、提供が追いついていないというのが事実です。
1人でも多くの赤ちゃんを救うためにも、母乳バンクのますますの理解と周知、そして、登録施設の拡大が望まれます。
参考URL
『静岡新聞』https://www.at-s.com/news/article/shizuoka/1069394.html
『母乳バンク』https://milkbank.or.jp/for-donors/
『日本母乳バンク協会』https://jhmba.or.jp/donate.php
- MR(医薬情報担当者):編集部スタッフ:古谷祥子