学級内の発達障害の子どもの割合増加~認知と支援が広がる~
ひと昔前までは学級内で騒いだり読み書きが遅い子がいると、「しつけができていない」などと言われた事もありました。しかし、最近では自閉症やADHDといった発達障害に対する認知度が高まり、発達障害を持つ子どもや親に対する支援の輪も広がっています。
そんな中、文部科学省が実施した調査により、小中学校における発達障害の子どもの数が10年前よりも増加していることが明らかになりました。
今回は、調査結果を踏まえながら、発達障害に対する基礎知識や教育現場の取り組みについてご紹介します。
発達障害の特性はさまざま
発達障害とは、生まれつき脳の働き方が違うことで、幼児期より行動や情緒面に特徴がある状態です。自閉症スペクトラムや注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害、チック症や吃音などが含まれます。円滑なコミュニケーションを取ることが難しい、じっと座っていることが苦手、とそれぞれに特徴がありますが、同じ障害であっても特徴の現れ方には個人差があり、複数の障害を併発するケースも少なくありません。
したがって、発達障害を持つ子ども達に対しては、1人1人の特徴に合わせた対応が求められています。
発達障害の子どもは全国に80万人
厚生労働省は障害のある者と障害のない者が共に学ぶインクルーシブ教育システムの実現のため、全国の教育現場の実態を把握すべく、令和4年1~2月に全国の公立小中高1800校に在籍する約8万人の児童生徒を対象に調査を実施しました。
調査では「話し合いの流れが理解できない」「まっすぐ字を書けない」などの学習面と、「教室で座ってられない」「周りに配慮しない言動をしてしまう」など行動面に関する質問について、規定のポイント以上該当する項目があれば発達障害の可能性があると判断しています。
実際には1600校の約7万5000人分について回答があり、小学生の10.4%、中学生の5.6%に発達障害の子どもがいる可能性があることが明らかになりました。全国の公立小中学校の児童生徒数に換算すると約80万人です。
本調査は2002年から10年に1度実施されていますが、2002年が6.3%、2012年が6.5%だったことを考えると今回は大幅な増加といえます。
認知と支援のさらなる拡大を
通常学級の発達障害の子どもの割合が増えている背景には、発達障害に対する認知度の高まりがあります。保護者や指導者が子どもの行動を意識して見るようになり、相談する機会が増えたことで、今まで見落とされていた子ども達が正しく理解されるようになりました。2017年度以降は文科省が支援担当の教員を計画的に増員したり、指導の質を高めるための手引き書を作成したりと改善を続けています。
今後も発達障害に対する理解がさらに進み、子ども達の特性を活かす支援が拡大していくことが望まれます。
参考URL
『ヨミドクター』
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20221213-OYT1T50101/2/
『文部科学省』
https://www.mext.go.jp/content/20221208-mext-tokubetu01-000026255_01.pdf
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/siryo/attach/1325884.htm
- MR(医薬情報担当者):編集部スタッフ:古谷祥子