くらべない育児で母親の不安を軽減~低体重児向けの母子手帳LBHとは~
早産などの理由で出生体重が2500g未満の赤ちゃんは低出生体重児と言います。たとえ出生体重が未熟であっても、医学の進歩もあり、その後は健やかに成長する赤ちゃんがほとんどです。
しかし、中には成長スピードがゆっくりな子もいるため、母子手帳の成長曲線と比べて不安や焦りを抱える母親も少なくありません。
そこで今回は、そんな悩みを持つお母さん達に届けたい、低体重児向けの母子手帳「リトルベビーハンドブック」についてご紹介します。
母親の声から生まれた低体重児用の母子手帳
リトルベビーハンドブック(LBH)とは、静岡県立こども病院のNICUに入院していた低出生体重児の母親達の育児サークルのアイディアから生まれた、低体重児向けの母子手帳です。
一般的な母子手帳とは以下の点が大きく異なります。
母子手帳 | LBHの変更点 |
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月齢に応じた発育状況を尋ねる設問に対し「はい」「いいえ」で答える | 2択で答えず、赤ちゃんに初めて触った日、抱っこした日などの日付と、その時の気持ちを自由に記録する |
成長曲線グラフは体重が1000gから、身長が40cmから始まる | 体重0g、身長20cmから記録できる |
発育がゆっくりな子の場合、発育状況の設問の回答が「いいえ」ばかりになってしまうと、母親は自分が「母親失格」とプレッシャーを感じてしまいます。
また、成長曲線未満の大きさで生まれた赤ちゃんの場合は、母子手帳に成長を記入することができないため、国から自分の子の存在が否定されたような気持ちになることもあると言います。
こうした母親達の不安や焦りを少しでも解消するために、「誰とも比べなくていい。ゆっくりと赤ちゃんとの初めての日々を大切にしてほしい」という気持ちから、LBHは作成されました。
導入する自治体は増えている
LBHは初めて作成された静岡県を筆頭に、現在は11県6市で導入されています。
また、暫定版を運用しながら本格版を作成中の県や、2022年度中の作成を目指している県を合わせると、38の道府県で運用が検討されている状況です。
不安に寄り添う存在に
本当に悩んでいる母親は、いくら周りが「相談して」と言っても、不安な胸の内を誰にも打ち明けられないことが多いです。不安を口にすることで余計に辛くなることもあるでしょう。
LBHには、同じように低体重児を育てる親のリアルな声も掲載されているため、自分だけではないという励みになります。
また、一般的な母子手帳とは違い、LBHには子育て中の正直な気持ちを書き込める欄が多く設けられているため、周りの人間がLBHを読めば、母親が抱えている不安や思いを理解して寄り添いやすくなるでしょう。
出生児の約9.4%が低出生体重児である今、母親の育児の負担感を軽減するためにも、今後さらにLBHが普及していくことが望まれます。
参考URL
『時事メディカル』https://medical.jiji.com/topics/2837
『特定非営利活動法人HANDS』https://www.hands.or.jp/activity/littlebabyhandbook/
『静岡県』https://www.pref.shizuoka.jp/kodomokyoiku/kodomokosodate/1040717/1022292.html
- MR(医薬情報担当者):編集部スタッフ:古谷祥子