水泳中の事故に注意を~子どもに多いノーパニック症候群とは~
6月に入り気温が上がると水遊びやプール開きを始める学校も増えてきます。
子ども達にとっても嬉しいイベントである一方、溺水や飛び込みによる衝突事故などプールは危険とも隣り合わせです。
そこで今回は、子どもに多い水遊びの事故とその対策についてご紹介します。
学校管理下であっても事故は起こる
水泳中にもっとも起こりやすい事故は溺水、つまり「水に溺れる」事故です。溺れるというと、足が届かないほど深いプールや泳げないことなどが原因になり得そうですが、子どもの場合は学校管理下の安全な状況であっても溺水事故が発生しています。
独立行政法人日本スポーツ振興センターのデータによると、2012年度から2016年度の5年間に学校管理下の水泳の事故は25件で、そのうちの84%にあたる21件は溺水でした。
溺水事故が発生するタイミングとしては、授業中や学校行事、運動部の活動中などさまざまです。しかし、中にはプールから生徒が全員上がった後に水底に子どもが沈んでいたケースもあり、これは大人が想像しているよりも、子どもは静かに溺れる可能性があることを示しています。
静かに溺れるノーパニック症候群
水中で死亡することを水死と言い、子どもの水死に多いのが「ノーパニック症候群」です。
一般的に人が溺れた場合はパニックになり、空気を求めて手足をじたばたさせたり、「助けて」と声をあげることが多いでしょう。
ノーパニック症候群の原因は、「内因性疾患による心停止」「潜水前の過呼吸」「浸水反射」の3つがあると考えられており、子どもの場合は特に潜水前の過呼吸に注意が必要です。
潜水前にはできるだけ長い時間息を止めていられるよう、潜る前に大きな呼吸を繰り返します。これにより血液中の酸素濃度が増える一方で、脳に呼吸をするよう働きかける二酸化炭素の濃度が低下するため、潜水中に酸素濃度が低下しているにもかかわらず、「息が苦しい」と感じなくなってしまいます。
その結果、意識が薄れて潜水をしたまま水死してしまうのです。
子どもが潜水をする場合は、3回潜水をしたら5~10分程度の休息を取るなど、ノーパニック症候群の危険性を視野に入れた上で指導しましょう。
熱中症にも注意を
プールでは溺水だけでなく、熱中症にも注意が必要です。水に入っていると油断しがちですが、水泳中の熱中症は意外にも発生しています。
水温が33~34度よりも高くなると、水中にじっとしているだけでも体温が上がり、さらに泳ぐことで短時間に脈拍が上がって体温も上昇します。
プールでの熱中症を防ぐためには、プールから出て風通しのよい日陰で休憩して体温を下げたり、シャワーを浴びたりする方法が効果的です。
子ども達が安全にプールを楽しめるよう、事故が起こりやすい状況を理解して大人が適切な対策をとってあげましょう。
参考URL
『ヨミドクター』
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20230626-OYTET50020/?catname=column_yamanaka-tatsuhiro
- MR(医薬情報担当者):編集部スタッフ:古谷祥子