妊娠中に接種すべきワクチンとは?〜知っておきたい種類と注意点〜
妊婦のワクチン接種については様々な考え方があります。その理由の1つが、ワクチン接種の安全性です。
ワクチン開発の臨床試験において、妊婦への投与に関する安全性や生まれてくる子どもへの将来的なリスクについての正確な予測が難しいため、ワクチン後進国である日本では特に妊婦へのワクチン接種は忌避する傾向にありました。
しかし、最近では安全性の観点から妊婦の接種が勧められているワクチンや、接種しないリスクの方が高いワクチンなどが増えています。
そこで今回は、母子共に健康な状態で出産を迎えるために知っておきたい、ワクチンの種類と注意点をご紹介します。
なぜ妊婦はワクチンを打つべきなのか?
妊娠中はそうでない時にくらべて、免疫力が低下します。その理由は、子宮内で育つ胎児を、体の免疫細胞が異物と見なして攻撃しないようにするためです。
したがって、妊娠中は細菌やウイルスに対する抵抗力が低下してしまいます。
抵抗力が低下していると、普段であればなんて事のない風邪でも重症化する危険性があります。
また、母体から胎児に感染して、流産や早産を引き起こす可能性も少なくありません。
母子共に健康な状態で元気な赤ちゃんを産むためには、ワクチンで予防できる感染症は事前にワクチンを接種して免疫をつけておくべきだと言えるでしょう。
妊娠前と妊娠中に接種な可能なワクチン
ワクチンには大きく分けて「生ワクチン」と「不活化ワクチン」の2種類があります。生ワクチンは病気の原因となる病原微生物をそのまま使用するため、胎児へ移行して悪影響を与える可能性があるため摂取できません。
一方、不活化ワクチンであれば、接種のメリットが副作用などのデメリットを上回るようであれば、接種が可能です。
現在、日本で妊娠を希望する女性もしくは妊娠中に接種が可能なワクチンには以下の種類があります。
●妊娠前に接種が可能なワクチン
風疹ワクチン | 生ワクチン | 妊娠中に感染すると胎児に移行して、目の病気や難聴、心臓病などを引き起こすリスクがある |
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麻疹ワクチン | 生ワクチン | 妊娠中の感染は重症化しやすい 流産や早産の原因になる |
水痘(水ぼうそう)ワクチン | 生ワクチン | 妊娠中の感染は重症化しやすい 流産や早産の原因になる |
ムンプスワクチン(おたふく) | 生ワクチン | 上記に加えて、赤ちゃんが小さく生まれたり、目の病気や発育異常を伴ったりする場合がある |
※MR(風疹麻疹混合)ワクチンも接種可能
●妊娠中に接種可能なワクチン
インフルエンザワクチン | 不活化ワクチン | 胎児への影響はないが、妊婦が感染すると流産や早産のリスクがある |
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三種混合ワクチン (ジフテリア・破傷風・百日咳) |
不活化ワクチン | 1歳未満の乳児が感染すると重症化して呼吸停止する場合があるため、母体から胎盤を通じて胎児の頃から免疫を獲得させる必要がある |
コロナウイルスワクチン | mRNAワクチン | 胎児への影響はないが、妊婦が感染すると流産や早産のリスクがある |
このように、妊娠中に接種できるワクチンは限られているため、妊娠を希望している場合は事前にワクチン接種の必要性について検討したほうが良いでしょう。
また、百日咳のワクチンは生後3か月から乳児に接種可能ですが、実際には生後0~5か月の時期に最も重症化しやすいと言われています。
まだ、現時点では積極的に接種を勧める産婦人科は少ないですが、妊娠中に百日咳のワクチンを接種することのメリットも理解しておきましょう。
参考URL
『メディカルトリビューン』https://medical-tribune.co.jp/rensai/2023/0801557694/
『こどもとおとなのワクチンサイト』https://www.vaccine4all.jp/topics_I-detail.php?tid=50
『ナビタスクリニック』https://navitasclinic.jp/archives/blog/787
- MR(医薬情報担当者):編集部スタッフ:古谷祥子