腸内細菌が子どもの感情に影響!?
新型コロナの流行に伴い、免疫力の向上に対する意識が社会的に高まり、その中の1つとして「腸内環境」や「腸内細菌」に注目が集まっています。
実際、腸内細菌が免疫に関係していることは既に多くの研究により明らかになっていますが、京都大学大学院の研究により、腸内細菌が子どもの感情制御に影響を与える可能性があることが新たに発見されました。
そこで今回は、腸内細菌の役割と子どもの感情制御との関係についてご紹介します。
腸内細菌は細胞よりも多い
腸には大腸と小腸の2種類があり、それぞれ異なる役割を果たしています。小腸は「食べた物を消化して吸収する」臓器で、大腸は「栄養が吸収された後に残ったカスを便として形成する」臓器です。
人間の腸内には、およそ100~1,000兆個の細菌が棲みついており、そのほとんどが大腸に存在します。人間の細胞が約60兆個と言われているため、腸内細菌は人間を形成する細胞数よりもはるかに多いと言えます。
腸内フローラのパターンは幼少期に決定する
腸内細菌は約1,000の種類に分かれており、腸内では種類ごとに固まって腸内細菌叢を腸壁に形成しています。この状態が花畑(フローラ)のように見えることから、一般的に腸内細菌叢は腸内フローラと呼ばれることが多いです。
腸内フローラのパターンは1人1人異なりますが、基盤は3歳頃までに完成すると考えられています。そして、形成された腸内フローラは一生変わることはありません。したがって、幼少期に腸内環境を整えることが、成人期にも大きな影響を与えると言えます。
腸内細菌と食習慣が感情制御に影響
腸内フローラの形成には、母親の腸内環境や食生活、生活環境が関係します。さらに、腸は脳とも密接に関わっており、成人を対象とした研究では、腸内と脳の炎症との関連や腸内フローラと認知機能の関係も示唆されています。
しかし、子どもの腸内フローラについては分かっていないことも多いため、京都大学大学院の研究では、3~4歳の子どもの腸内フローラと感情制御などを含む実行機能との関連を検証しました。
その結果、「やりたいことを我慢する」などの感情制御が難しい子ども達の便からは、炎症疾患に関連する腸内細菌が多く検出されました。
また、緑黄色野菜の摂取量が少なく偏食の割合も多かったため、子どもの腸内フローラや食習慣は、子どもの感情制御に影響を与える可能性があると言えるでしょう。
もちろん、今後さらに個別化した方法での検討が必要ではありますが、幼少期の腸内環境は子どもの人生に大きな影響を与える可能性があることを覚えておきましょう。
参考URL
『メディカルトリビューン』https://medical-tribune.co.jp/news/2023/0914558301/
『健康長寿ネット』https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/kenko-cho/chonai-saikin.html
- MR(医薬情報担当者):編集部スタッフ:古谷祥子