妊娠中の予防接種で赤ちゃんのRSウイルス感染を予防できる⁉︎ワクチンの開発と今後の展望
2歳までにほぼ100%の子どもが感染すると言われているRSウイルス。
比較的発症しやすい感染症である一方、乳幼児の場合は重症リスクが高いため、小さな子どもを育てる親御さんにとっては怖い病気の1つです。
そんな中、日本国内で初めてのRSウイルスワクチンが開発されました。
そこで今回は、RSウイルスとワクチン接種により期待できることについて解説します。
「よくある病気」だけど重症化リスクも
RSウイルスとは、世界中に広く分布するウイルスで、主に呼吸器の感染症を引き起こします。
感染力が高いため、子どもだけではなく大人になっても繰り返し感染しますが、初感染時に最も重い症状が出やすいというのが特徴です。
乳幼児の肺炎の50%、細気管支炎の50〜90%がRSウイルスによるものとされており、基礎疾患のある子どもの場合は重症化して、無呼吸発作を起こす可能性もあります。
実際に、日本では毎年約12~14万人にのぼる2歳未満の子どもがRSウイルス感染症と診断されており、そのうちの25%にあたる約3万人は入院を要するとされています。
妊娠中のワクチン接種で将来的な子どもの重症化を防ぐ
非常に患者数が多いRSウイルスですが、いまだに治療法は確立されていません。
重症化を防ぐ薬は開発されているものの、適用可能な対象が非常に限られているため、生後早期からの予防が必要でした。
こうした状況で今回開発されたRSウイルスワクチンには自然と期待が高まりますが、このワクチンは子ども本人が接種するのではありません。
妊娠中の母親が接種することで、胎盤を通じて胎児にRSウイルスの中和抗体を移行させることで、生後のRSウイルスによる肺炎などを予防するワクチンです。
既に実施されている臨床試験では、有効性と安全性が認められており、特に妊娠28~36週に接種した場合に有効性が高い傾向があることが分かっています。
ワクチンについては人によって様々な考え方があり、接種によって100%RSウイルス感染症の重症化を予防できるわけではありません。
しかし、妊娠中の接種によって、子どもの未来が守られる可能性もあります。
1つの選択肢として、今後RSウイルスのワクチンを接種できるようになることを知っておきましょう。
参考URL
『メディカルトリビューン』https://medical-tribune.co.jp/news/2024/0304561777/
『日本小児科学会』https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20240221_RWvirus_kangae.pdf
- MR(医薬情報担当者):編集部スタッフ:古谷祥子