低体重出生児へのドナーミルク提供〜東京都の取り組みに期待できること〜
近年の晩産化や医療技術の発達により、低出生体重児、さらには出生時の体重が1500g以下の極低出生体重児の出生割合が増えています。
こうした赤ちゃんは、臓器の発達が未熟なことが多い一方で、粉ミルクは上手く消化することができないため、母乳による栄養管理が必要です。
しかし、母親の母乳が十分に出ないケースも少なくなく、赤ちゃんの健康を左右する一つの問題となっています。
そこで今回は、低体重児へのドナーミルク提供促進と利用料補助の取り組みについてご紹介します。
世界から見る日本の現状
日本における低出生体重児の出生率は、1900年台後半ごろから増加し始め、2000年~2010年にピークを迎えました。その後も、割合は9.5%のまま横ばいが続いていますが、その数字は先進諸国の中で最上位の割合です。
したがって、現在の日本は世界的にみても低出生体重児が生まれやすい国と言えます。
低体重出生時に母乳が必要な理由
低体重出生児は、臓器の発達が未成熟といった理由から、どうしても病気にかかりやすかったり、神経発達に影響がでたりすることがあります。
特に、極低出生体重児は、腸の一部が壊死する「壊死性腸炎」をはじめ、未熟児網膜症や慢性肺疾患などさまざまな合併症を引き起こすリスクが高いと言われています。
こうした合併症を起こさないために必要とされているのが、母乳です。母乳には、腸の粘膜を成熟させる物質が含まれるほか、免疫力を高める効果などがあります。さらに、粉ミルクよりも腸に負担をかけず、適切な栄養を効率良く摂取できるため、低体重出生児には母乳が必要なのです。
母乳バンクの利用料を都が補助
母乳には、赤ちゃんにとってさまざまなメリットがある一方、極低出生体重児のお母さんは、超早産や帝王切開などによる体力低下や精神的負担により、産後すぐに母乳を与えることが難しいケースも多いです。そこで今、別の健康な母親から母乳の提供を受け、検査・殺菌処理を経て作られるドナーミルクの注目が高まっています。
現在、ドナーミルクを全国の医療機関に送っているのは、日本母乳バンク協会と日本財団母乳バンクの2団体です。
医療機関は母乳バンクに最大120万円の年間利用料を支払うことで、母親の費用負担なくドナーミルクを提供していますが、この費用がネックとなり、ミルクが必要なおよそ5000人の赤ちゃんにドナーミルクが行き届いていない状態と考えられています。
そこで、東京都では利用料を肩代わりすることで、ドナーミルクを利用できる医療機関を増やそうと働きかけています。さらに、母乳を提供する母親が母乳バンクに登録する際の費用も都が負担することで、提供側と利用側の両方を支援する予定です。
こうした動きが広がり、ドナーミルクを必要としている赤ちゃんに母乳が提供できる体制が整うことが望まれます。
参考URL
『ヨミドクター』
https://www.yomiuri.co.jp/yomidr/article/20241207-OYT1T50085/?catname=haishin_shakai
- MR(医薬情報担当者):編集部スタッフ:古谷祥子