AIが野球肘を早期発見⁈子どもの未来につながる医療技術とは
大谷選手の輝かしい活躍もあり、最近ではより一層、野球に興味を持つお子さんも増えたのではないでしょうか?
そんな野球に馴染みのある病気の一つに、野球肘があります。
選手にとっては野球肘が原因で、野球を続けるかどうか分からない状態に陥ることもあるため、子どもの未来に大きく影響する病気とも言えるでしょう。
そこで今回は、AIによる野球肘の早期発見と期待についてご紹介します。
野球肘とは
肘には、三つの骨が弾力性のある靭帯によってつながっています。しかし、過度な投げ込みなどにより、骨同士が頻繁にぶつかったり、靭帯が引っ張られたりすると、骨や軟骨、成長軟骨などに傷がつくと野球肘を発症します。
発症部位により野球肘には主に二つがあり、一つ目が手のひらを上に向けたときの小指側の肘に起こる「内側型」です。野球肘の大半は内側型ですが、親指側の肘に起こるもう一つの「外側型」は、症状が出にくい上、診断後に長く安静を強いられるため、子どもへの影響も大きいため、注意が必要です。
実際に、野球をする子ども2000人の肘を超音波検査した調査では、その3.4%に外側型の野球肘が見られ、約半数は肘の痛みがなかったという報告でした。
外側型の野球肘は、初期段階で安静などの保存療法ができれば9割が完治しますが、発見が遅れて症状が進行した場合は、5割程度に手術が必要となります。
したがって、野球肘をできるだけ早期発見することが、子どもの治療負担を軽減し、野球を続ける未来を守ることにつながるのです。
プログラムにより外側型を早期発見
現在、初期の外側型野球肘を発見するため、全国各地で年に1~2回、超音波検査による「野球肘検診」が行われています。しかし、頻度が十分でないこと、また、検査や診断ができる専門知識を備えたスタッフが不足しているというのが現状です。
そこで、京都府立医科大学と兵庫県立大学による研究チームでは、超音波検査の画像から肘の骨表面を自動検出し、外側型の特徴である「離断性骨軟骨炎(OCD)」が起きているかを瞬時に判別するプログラムを開発しました。
正常な状態の肘と野球肘の子どもの大量の画像データを学習させることで、最高97%の精度で症状を検出できるとされています。
今後、プログラムが実用化されれば、専門のスタッフがいなくてもスポーツの現場でOCDの早期発見が実現できるため、野球を頑張るより多くの子ども達の未来を救う一つの手段になるでしょう。
参考URL
『時事メディカル』https://medical.jiji.com/topics/3597
- MR(医薬情報担当者):編集部スタッフ:古谷祥子