親子で向き合うADHD~ペアレント・トレーニングとは~
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ADHD(注意欠如・多動性障害)の子どもの数は、障害に対する認知度の高まりとともに、年々増加している状況です。それほど身近な問題であると同時に、子どもの特性について悩む保護者の方も増えていると言えるでしょう。
そこで今回は、ADHDの子どもを持つ親向けに開発されたペアレント・トレーニングについてご紹介します。
ADHDには3つの領域がある
ADHDとは、年齢や発達に不釣り合いな注意力や衝動性、多動性の3つの領域の症状を特徴とする障害です。明確な原因は不明ですが、脳になんらかの機能障害があると考えられており、幼稚園から小学校低学年ごろに現れることが多いとされています。
具体的には、それぞれの領域について次のような症状が現れた場合は、ADHDの可能性を検討する場合があります。
- (1)不注意
- ・課題や遊びの活動で、注意を集中し続けることが難しい
- ・学習などの課題や活動を順序立てて続けることが難しい
- ・課題や活動に必要な物をなくしてしまう
- ・気が散りやすい
- ・面と向かって話しかけられていても、聞いていないように見える
- (2)多動性
- ・授業中など座っているべき時に、席を離れてしまう
- ・じっとしていない、何かに駆り立てられるように動く
- ・過度にしゃべる
- ・手足をそわそわ動かす
- (3)衝動性
- ・質問が終わらないうちに答えてしまう
- ・順番を待つのが難しい
- ・他の人がしていることを遮ったり邪魔したりする
親の心の健康が子育てに対する前向きな気持ちにもつながる
ADHDは、本来であれば言語や運動、社会的発達に遅れを与えることはありません。しかし、症状が強い場合は、学習や集団生活に影響を与える可能性があります。特に、子どもの一番近くで接する保護者の方の中には、行動問題とうまく向き合えず、自身がストレスを抱えてしまい、最終的には親子関係に支障をきたしてしまうケースも少なくありません。
そこで、ADHD児の母親が子どもの接し方と自身の心のケアについて学ぶ「ペアレント・トレーニング(ペアトレ)」が注目されています。
中でも、ペアトレの一種である「ウェル・ペアレント・ジャパン(WPJ)」では、週1回2時間、全13回のグループセッションを通して、「自分の子がどこに、どうしてつまづいているのか」を理解し、同じ悩みを持つ保護者と話し合うことで、自身の心のケアにつなげることができます。
実際に、WPJを受けた母親は、WPJを受けずに通常医療を受けた母親にくらべて、育児ストレスの低下、子育てスタイルの改善、子育てへの自信の増加といった効果が示されました。
このように、親の育児ストレスを軽減し、心の健康を手に入れることで、子どもの行動に対しても前向きなアプローチができるようになります。
今後は教師向けの教材も開発し、小学校で親がWPJを受講することも検討されているようなので、親子に対するさらなる支援が広がることが望まれます。
参考URL
『時事メディカル』
https://medical.jiji.com/topics/3664
『文部科学省』
https://www.mext.go.jp/content/20240906mxt_tokubetu02-000037861-01rr.pdf
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/054/shiryo/attach/1361233.htm
MR(医薬情報担当者):編集部スタッフ:古谷祥子