帝王切開は子どもの発達に影響は与えない!?新たな研究で見えた可能性について

以前は出産というと、「経腟分娩が正解」という風潮がありましたが、今では帝王切開も当たり前の選択肢の一つになっています。
一方で、世界的に「帝王切開は子どもの発達に影響を与える可能性がある」という研究報告がいくつもされており、不安を抱く母親も少なくありません。
そこで今回は、帝王切開の概要と子どもの影響に関する新しい調査結果についてご紹介します。
予定帝王切開と緊急帝王切開
帝王切開とは、経腟分娩では母体と胎児に危険が伴う場合に行われる分娩方法です。前回の出産が帝王切開だったり逆子を指摘されていたりする場合は、あらかじめ日時を決めて手術を行う予定帝王切開を行います。
一方で、経腟分娩を予定していたけれど、分娩中に赤ちゃんの心拍に問題が生じたり、お産がなかなか進まないなど予定外の問題が発生した場合は、緊急帝王切開が適用されます。このように、帝王切開は出産を予定している人であれば、誰にでも起こり得るということを覚えておきましょう。
増加を続ける帝王切開
帝王切開は、麻酔をかけて腹部を切り、子宮から赤ちゃんを直接取り出す手術です。麻酔は下半身にのみかかっているため、妊婦さんも医師と話をしたり、産声を聞いたりすることが可能です。
赤ちゃんの頭部よりも長めにお腹を切るため、出血や術後の痛み、血栓症などの合併症のリスクもありますが、手術自体は比較的安全と言われています。
さらに、ここ数年は分娩件数が減少傾向にある中で、帝王切開での分娩件数は増加傾向にあり、一般病院の分娩数の約29%、診療所の分娩数の約15%を帝王切開が占めるなど、帝王切開で生まれた赤ちゃんが増えつつあります。
一方で、帝王切開は子どもの発達遅延や自閉症スペクトラム障害などとの関連などネガティブな研究報告もあり、帝王切開という分娩方法に不安を抱く保護者の方も少なくないというのが現状です。
帝王切開と発達に関連がないという結果に
今回、岡山大学では日本産科婦人科学会の周産期データベースと厚生労働省の21世紀出生児縦断調査を統合し、国内における新生児2,114人を経腟分娩群と帝王切開群に分けて9歳まで追跡調査しました。
その結果、子どものほぼ全ての健康と発達に関する指標と帝王切開の間に有意な関連性はありませんでした。具体的には、2.5歳時点の運動および言語、5.5歳時点の認知・社会・情緒および自己制御の問題、8歳時点の注意・適応および行動の問題といった項目について検証しましたが、いずれにおいても帝王切開との関連は見られていません。
もちろん、統計的な関連がないと言っても臨床的な影響がないとは言えませんが、今回の検証により、医療従事者と親に対し帝王切開の安全性について一定の安心感を与えることはできたのではないかとされています。
参考URL
『ヨミドクター』
https://www.yomiuri.co.jp/yomidr/article/20250206-OYTET50001/?catname=medical-tribune
『厚生労働省』令和5(2023)年医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況』
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/23/dl/02sisetu05.pdf
MR(医薬情報担当者):編集部スタッフ:古谷祥子