小児ADHD、海外に比べ国内処方率の低さが判明
最近徐々に世間の認知度が上がっているADHD(注意欠陥多動性障害)ですが、いまだ治療方法や薬については一般的に普及していない現実があります。そんな中、東京都医学総合研究所では国内で初めて小児ADHDに対する治療薬の処方率を調べてその実態を明らかにしました。
ADHDとはどのような病気?
ADHDというと「落ち着きのない子供の病気」というイメージがあるかもしれませんが、実は子供だけでなく大人にもみられる発達障害の内の1つです。特徴としては「不注意(集中力がない・気が散りやすい)、多動性(じっとしていられない)、衝動性 (順番を待てない)」の3つの要素が挙げられます。 ADHDの患者はその症状により社会的な活動や学業に支障をきたすことがありますが、小さい子供にはよくあることなので、特に幼少期は周囲の人に障害として理解されづらく、見過ごされたり誤解を受けてしまうケースが多いというのが現状です。
薬剤処方率は米国は5.3%に対し日本は0.4%
ADHDは国ごとの有病率に差はありませんが、薬剤処方率には大きな差があるため、今回の研究では実際にどの程度の違いがあるのかを把握するべく実態調査が行われました。2014年4月から15年3月までにADHD治療薬を処方された18歳以下の患者8万6,756例を対象に分析したところ、日本におけるADHD治療薬の年間処方率は0.4%と米国の5.3%やノルウェーの1.4%などに比べて非常に低い事が判明しました。
過少処方なのか適正使用の範囲内か再検討が必要
今回の結果の原因として、日本ではADHD治療薬を処方できる医師に制限があるなど処方制限施策がとられていることが考えられます。処方率の低さ=過少処方であるのか、もしくは適正使用の結果として処方率が低いのかはまだ検討の余地がありますが、今回の研究も世間におけるADHDの認識が深まるきっかけとして意義のあるものになったと言えるでしょう。
参考URL
『メディカルトリビューン』https://medical-tribune.co.jp/news/2018/0907515760/
『ラジオNIKKEI』http://medical.radionikkei.jp/medicalq/Press_0612_MedicalQ7.pdf
- MR(医薬情報担当者):編集部スタッフ:古谷祥子