経口免疫療法は、牛乳よりも卵アレルギーに有効か!?
子どもの食物アレルギー発症原因のトップ2である鶏卵と牛乳。
発症すると食生活に大きな制限がかかるため、子どもだけでなく親にとっても非常に気になる問題です。
そんな中、第69回日本アレルギー学会において、「経口免疫療法が牛乳アレルギーよりも鶏卵アレルギーに対し有意な改善をもたらす可能性がある」という研究結果が明らかになりました。
経口免疫療法とは
今までは経口負荷試験と呼ばれる試験で、アレルゲンとなる食物を食べてアレルギー反応が出た(陽性)場合は、対象となる食物を除去して生活するというのが一般的でした。
しかし、最近では専門医の管理に従って、毎日少しずつ対象の食物を食べていき、段階的にその量を増やしていくことで、最終的にアレルギーを克服するという経口免疫療法というものが実施されています。
メリットとしては、
- ・食物を除去する必要がないため、日常生活に支障をきたさない
- ・成長に必要な栄養素を確保しやすい
- ・治療中にアレルギー症状が現れるのは必至であり、アナフィラキシーのリスクがある
- ・一部の症例にしか治療効果が認められていない
鶏卵アレルギーの8割は改善
今回の研究では、鶏卵と牛乳それぞれのアレルギーを有する6歳以下の子ども42名を対象に、12ヵ月に渡って経口免疫療法を実施しました。
治療後、アレルギー症状なしに対象食物を食べられる量が、治療前にくらべてどれだけ増加したのかを検証したところ、鶏卵アレルギー群では牛乳アレルギー群よりも有意に摂取量が改善。
さらに、食物負荷試験を実施したところ、牛乳アレルギー群の陰性率は42%であったのに対し、鶏卵アレルギー群の陰性率は80%であり、治療効果が有意に高いということが明らかになりました。
安全性はまだ確立されていない
今回の研究により、経口免疫療法は鶏卵アレルギーで悩む子どもと親にとって非常に有効な治療法であることが示唆されましたが、経口免疫療法の安全性についてはまだ確立されていない部分もあるというのが事実です。
しかし、できるだけ子ども達が制限なく、食物を食べられるようになるためにも、経口免疫療法について更に研究が進み、食物アレルギー治療の選択肢が増えることが望まれます。
参考URL
『メディカルトリビューン』https://medical-tribune.co.jp/news/2020/1013532907/
『食物アレルギー研究会』https://www.foodallergy.jp/care-guide/oral-immunotherapy/
『相模原病院』https://sagamihara.hosp.go.jp/sinryouka/syounika_keikoumeneki.html
- MR(医薬情報担当者):編集部スタッフ:古谷祥子