進む子どもの弱視治療〜健診で早期発見を〜
3歳児健診に視覚健診が導入されて以降、今まで見過ごされてきた子どもの弱視を早期発見できるようになりました。
しかし、幼い子どもにとって、依然として視力検査はハードルが高く、弱視と気がつかずに大人になってしまうケースも少なくありません。
そこで今回は、弱視発見のために導入され始めた新しい検査機器と最新の弱視治療についてご紹介します。
早めが肝心
弱視は50人に1人の割合で発症します。今や、珍しい病気ではありません。
弱視というと「視力が低くて物がよく見えない状態」をイメージしがちですが、正確には、「眼鏡をかけても十分な視力を得られない状態」を言います。
なんらかの原因で視力の成長が止まることにより発症します。
視覚機能が最も発達する3歳までに治療を開始することが、その後の視力回復につながるため、早期発見と早期治療が非常に重要です。
弱視の見逃しを防ぐために
全国的に3歳児健診で視力検査が導入されるようになってからは、今まで見過ごされていた弱視の子ども達も医療機関へ紹介されて適切な治療を受けられるようになってきました。
しかし、C字(ランドルト環)を用いた家庭での視力検査や問診は3歳児にとってハードルが高く、正確な結果を得られないことが多いです。
また、弱視の診断には屈折検査が必要ですが、検査機器は据え置きタイプで、椅子にじっと座って受ける必要があるため、健診では用いることができませんでした。
そんな中、10秒程度の簡易な検査で弱視などの原因となる屈折異常を判定できる専用機器が開発され、現在は松江や静岡、京都市などの自治体が導入しています。
専用機器導入後における弱視の疑いがある子どもの発見率は、導入前よりも数倍高くなっており、それだけ多くの子ども達が見逃されていたことがわかります。
2022年度の予算で国からも購入費用の一部が補助されることが決定したため、今後は全国的に導入する自治体が増えていくことでしょう。
最新技術で治療にも変化
弱視は検査だけでなく、治療においても新たな方法が検討されています。
弱視の治療と言えば、両目のピントを合わせるために矯正用の眼鏡を装用したり、健全な目をアイパッチなどで隠して、悪い方の目の視機能を積極的に発達させたりする方法が一般的です。
そんな中、最近ではVR技術を応用した弱視の治療向けのけん玉ゲームアプリが開発され、注目されています。
ゴーグル型のVR端末を装着すると、弱視の目には鮮明な、健康な目にはぼやけたけん玉の映像が映し出され、けん玉遊びをする内に悪い方の目を鍛えるという仕組みです。
やり過ぎると目に負担もかかるため、実用化までは課題も多いですが、今後の治療法の1つとして期待できるかもしれません。
参考URL
『時事メディカル』
https://medical.jiji.com/news/54376
『京都新聞』
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/amp/806177
『公明党』
https://www.komei.or.jp/komeinews/p238457/
『眼科医会』
https://www.gankaikai.or.jp/school-health/2021_sansaijimanual_screener.pdf
- MR(医薬情報担当者):編集部スタッフ:古谷祥子