読み書きや算数が苦手〜限局性学習症とは〜
学校などの学習現場で「他の子にくらべて読み書きが遅い」「暗算や図形の認識が苦手」という子どもがいても、ほとんどの場合は個性としてそのまま見守られることが多いです。しかし、実は知能的な問題がないにも関わらず特定の分野だけを苦手と感じる「限局性学習症」という障害が隠れている可能性があります。
そこで今回は、学童期に見過ごされてしまいがちな限局性学習症についてご紹介します。
知能や身体の発達に問題はない
限局性学習症(SLD)は、知能や身体の発達には何の問題がないにもかかわらず、読み書きや算数など特定の分野の習得にだけ著しい困難が生じる障害です。発達障害の一種で、生まれつきの脳機能異常が原因と考えられていますが、本格的な学習が始まる学童期以降でなければ症状は明らかになりません。しかし、SLDを抱える子どもの中には、周囲の大人から「算数が苦手な子」「読み書きの能力が低い子」という認識をされて、SLDという障害に気付かれない場合もあります。したがって、早期に、そして、的確にSLDであると気が付くためには、小学校などの学習現場はもちろん、家庭内でもSLDについて理解を深めておくことが大切です。
診断後の対応が重要
SLDの診断にはディスクレパンシー・モデルとRTIモデルの2つの方法があります。前者は、知能検査と個別化した学力検査を行い、学業成績や知的能力にくらべて読み書きや計算などの学力が平均よりも1.5標準偏差以上低い場合にSLDと診断する方法です。
後者は、子どもの学習の進み具合を見ながら、教育現場で子どものニーズに合わせた支援や指導を行う方法で、早い段階からSLDに介入できるメリットがあります。
また、SLDは自閉症など他の発達障害に併発するケースもあるため、医療機関で心理検査や画像検査を行うこともありますが、基本的には教育現場で判断から支援まで完結できる疾患です。
家族がSLDについて正しく理解しておくことは大切ですが、指導をするには専門的な視点や工夫が必要になります。したがって、SLDの疑いがある場合は家庭内で問題を抱え込まず、学校や地域の教育センターと連携しながら子どもをサポートすることが大切です。
参考URL
『時事メディカル』https://medical.jiji.com/topics/2768
『厚生労働省』https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-03-004.html
- MR(医薬情報担当者):編集部スタッフ:古谷祥子