長引く子どものお腹の不調~好酸球性胃腸炎とは~
子どもの消化器は大人にくらべると未熟なため、食べ物や気候、ストレスなどが原因で不調をきたしやすいです。下痢や嘔吐と言えばノロウイルスやロタウイルスなどの感染性胃腸炎が代表的ですが、中には原因不明のままお腹の不調が続くケースもあります。
そこで今回は、これまであまり知られていなかった好酸球性胃腸炎という病気について紹介します。
EGEは原因不明の病気
好酸球性胃腸炎(EGE)とは、好酸球というアレルギー性の炎症を起こす白血球の一種が、胃や小腸、大腸といった消化器官に多く集まり、慢性的に炎症を起こす病気です。食物や花粉などが症状を悪化させることはありますが、ECGを発症する明確な原因は解明されていません。
基本的にはどの年代の人も発症する可能性があり、従来は子どもが発症するケースも非常にまれだと考えられていました。しかし、済生会横浜市東部病院の臨床研究報告により、腹痛や嘔吐、下痢などの症状がある子どものうち、1割強がECGであることが明らかになりました。
内視鏡検査で1割強の患者がEGEと判明
今回の研究では、2007年4月から2017年12月の間に原因不明の消化器症状があり、同病院で内視鏡検査を受けた1~15歳の子ども860人を対象に調査を実施。その結果、12.7%を占める109人がEGEを診断されました。今までEGEはまれな病気だと考えられていたため、今回の研究報告により、子どものEGE患者は想定よりも多いことが示唆されました。
EGEと診断された子ども達の主な症状は腹痛が76%、下痢が23.9%と何か特徴的な症状があるわけではありません。
しかし、EGEの場合は内視鏡検査で胃から大腸までの組織を採取して調べると、好酸球数が一定数以上いるため、他の疾患と鑑別するためには内視鏡検査が必要です。EGEであることが分かれば、ステロイド治療や症状を悪化させる食物などの原因を除去することで、症状を改善させることができます。
子どもの成長のために正しい診断を
お腹の不調が続くと、子どもの場合は食べる量が減って身長が伸びなくなったり、症状が気になり学業に支障を来す可能性も高いです。
子どもの内視鏡検査ができる施設は多くはありませんが、今後はEGEで苦しむ子どもを見落とすことがないよう、疾患が広く認知され、EGEを疑って詳しく検査をする施設が増えることが期待されます。
参考URL
『ヨミドクター』https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20230111-OYTET50000/
『難病情報センター』https://www.nanbyou.or.jp/entry/3934
『済生会横浜市東部病院』https://www.tobu.saiseikai.or.jp/news_f/33191/
『国立成育医療研究センター』https://www.ncchd.go.jp/center/activity/egid/patient/ege.html
- MR(医薬情報担当者):編集部スタッフ:古谷祥子