アトピーの早期治療は食物アレルギーにも有効か⁈
乳児期に発症したアトピー性皮膚炎が食物アレルギーの発症リスクを高めるということは、さまざまな研究により明らかになっています。
しかし、アトピー性皮膚炎を早めに治療することで食物アレルギーの発症を抑制するという実証研究は多くはありませんでした。
そこで今回は、世界で初めてアトピー性皮膚炎の早期治療介入による食物アレルギー発症予防効果を検討する比較試験を実施した国立成育医療研究センターの報告をご紹介します。
食べない治療から食べる治療へ
従来の食物アレルギー治療の考え方では、子どもの腸機能は未熟なため、アレルゲンとなる食物を入れない方が良いとされ、卵や牛乳といった食材はできるだけ成長が進んでから摂取する方法が推奨されていました。
しかし、2008年ごろから提唱された「二重抗原曝露仮説」により、治療方針は一転します。
二重抗原暴露仮説によると、湿疹などによって荒れた皮膚からアレルゲンが侵入することは食物アレルギーの発症リスクを高める一方、口から入って消化管で吸収されたアレルゲンは認識されず、アレルギーの発症リスクを下げるとされています。
- 皮膚暴露
- 湿疹などで皮膚が荒れたところに、アレルゲンが侵入
「経皮感作」を起こしてアレルギーを発症
- 経口暴露
- 口から摂取されたアレルゲンが腸に届く
「経口免疫寛容」によりアレルゲンと認識されず、発症を抑制する
皮膚から抗原が入ることを医療用語で経皮感作、口から食べることを経口免疫寛容と呼びます。
二重抗原暴露仮説が正しければ、アトピー性皮膚炎の早期治療による経皮感作の予防とアレルギーの原因となる食物の早期経口摂取による経口免疫寛容の誘導が食物アレルギーの発症予防に効果的な方法と言えるでしょう。
積極的な早期治療介入により卵アレルギーを予防
経口免疫寛容の検証については複数の研究が行われていますが、アトピー性皮膚炎の早期治療介入による経皮感作の予防については比較検討した研究がありません。
そこで、国立成育医療研究センターでは、全国16の施設でアトピー性皮膚炎と診断された生後7~13週の乳児を、積極的に治療する群と標準的な治療をする群の2つに分けて、早期治療介入による食物アレルギー発症予防効果を検証しました。
積極的治療とは、1日2回の保湿剤の塗布に加えて、炎症箇所のある無しに関わらず、ステロイド外用薬をスケジュールに合わせて全身に塗布するという治療法です。
その結果、鶏卵アレルギーの有病率について、積極的治療群の方が標準的治療群にくらべて低いことが明らかになりました。
乳児期のアトピー性皮膚炎の重症度は個人差が大きいため、全てにおいて同じような結果が得られるわけではありません。
しかし、今回の研究は、アトピー性皮膚炎の早期治療介入が経皮感作リスクを低下させ、食物アレルギー発症予防につながるという二重暴露仮説を実証する形になりました。
食物アレルギーは子ども自身はもちろんのこと、親御さんにも負担が大きい疾患です。
少しでもアレルギーの発症リスクを抑えることができるよう、さらなる実証研究が期待されます。
参考URL
『メディカルトリビューン』https://medical-tribune.co.jp/news/2023/0413556289/
- MR(医薬情報担当者):編集部スタッフ:古谷祥子