増えている乳幼児の消化管アレルギー~食物アレルギーとの違いと対策~
子どもの食物アレルギーに対する認知は年々拡大しており、症状が現れた場合の対策については家庭内だけでなく園や学校でも共有されています。
一方で、同じように食物が原因でアレルギー反応が誘発される「消化管アレルギー」については、原因や対策が正しく広まっていないというのが現状です。
そこで今回は、最近増えている乳幼児の消化管アレルギーについてご紹介します。
食物アレルギーとどう違う?
消化管アレルギーとは、乳幼児が食事の数時間後に嘔吐や血便、下痢などの症状を引き起こす病気で、正式には食物たんぱく誘発胃腸症と言います。飲食をした1時間以内にじんましんやくしゃみなどを引き起こす食物アレルギーとは発症のタイミングが異なり、発症時期も0~2歳と限定的です。
消化管アレルギーの原因は、卵黄や牛乳、大豆などに含まれる特定のタンパク質ですが、食物アレルギーのように血液検査で原因を特定することができません。
したがって、疑わしい症状が出た場合は、医師が何種類かの飲食物を少量ずつ子どもに摂取させることで原因を特定します。
乳児期の発症が多い
消化管アレルギーの患者の多くは乳児です。国立成育医療研究センターが2011~2014年までに全国9万3000人の赤ちゃんを調べたところ、そのうちの約0.5%が1歳半までに医療機関で消化管アレルギーと診断されていました。
原因としては卵黄が4割と最も多く、牛乳2割、大豆1割の順で続きます。食物アレルギーでは卵白が原因で発症しやすいと言われているため、離乳食を始める場合に卵白に注意する親御さんは多いです。
一方で、卵黄に対してはハードルが低いことが多く、思いがけず消化管アレルギーを発症するというケースもあります。
治療法はないため、発症した場合は原因物質を特定して徹底的に除去しなくてはなりません。しかし、ほとんどは2~5歳ごろまでに自然に治癒します。
食事や症状の記録が治療に役立つ
消化管アレルギーは医師の中でも認知度が低い病気です。
したがって、小児科を受診しても見落とされてしまう可能性も少なくありません。
適切な診断を受けるためには、親が食事の内容や症状などを記録して、医師に正確に伝えることが重要です。
また、国立成育医療センターでは、国内で初めて消化管アレルギーにおる嘔吐の症状に合わせた保護者向けのアクションプランを作成しています。
プランには、「嘔吐時に視線が合わないなどの症状がある場合はすぐに救急車を呼ぶ」「っ軽症でも4~6時間は見守り、水分が取れない場合は医療機関を受診する」など、具体的な対応策が掲載されています。
子どもの命を守るためにも、必要な場面で的確な対応ができるよう、情報を集めておきましょう。
参考URL
『国立成育医療研究センター』https://www.ncchd.go.jp/press/2023/0510.html
- MR(医薬情報担当者):編集部スタッフ:古谷祥子