コロナ禍の生活が5歳児の発達の遅れに影響~子どもにとって大切な交流とは~
コロナウイルスの拡大によって、私たちの生活は大きく変化しました。マスクの着用や手指消毒といった基本的な感染対策に加えて、休校・休園措置やソーシャルディスタンス、在宅勤務の推奨など、生活様式の変化は子どもの発達にも大きく影響を与えています。
そこで今回は、京都大学などの研究グループが発表したコロナ禍の生活と5歳児の発達の関係についてご紹介します。
コロナ禍を経験した5歳児の発達月齢に遅れ
京都大学などの研究グループでは、コロナ禍を経て子ども達の発達にどのような影響があったのかを検証するため、2017~2021年にかけて首都圏の自治体の協力のもと、計440人の園児を対象に調査を実施しました。
具体的には、2019年度の時点で5歳になった園児と、コロナ禍を経験して2021年度に5歳になった園児について、運動や言語など約130項目を評価して発達月齢を推定しています。
その結果、コロナ禍未経験の園児の発達月齢を基準すると、コロナ禍を経験した園児は5歳時点で約4.39か月の遅れがあることが分かりました。
項目別に見ると、「大人とのコミュニケーション能力」が6.41か月、「主体的に話す能力」が5.64か月と発達の遅れが目立っており、コロナ禍を経験した園児達は能力の差のばらつきも大きい傾向にありました。
交流制限が発達の節目に影響した可能性がある
4~5歳は子どもにとって発達の節目と呼ばれる大切な時期です。
まず、4歳では友達との遊びを通して、「自分がしたいことがあるけれど我慢する」といったように自分の感情をコントロールする術を身に着けます。
また、自分の経験したことや感じたことを言語化して人に伝えられるようになる子が多いです。
さらに、5歳になると友達と役割分担をして協力しながら遊びや活動を行うことができるようになります。社会性が身につくと共に、より複雑な会話ができるようになるため、大人とコミュニケーションを取ることも増えるでしょう。
4~5歳は社会性やコミュニケーション能力が大きく発達する大切な時期です。その大事な時期に、友達や他の大人との交流が制限され、自宅で家族と過ごすことが多かった園児達は、コロナ禍を経験していない園児にくらべて発達月齢が遅れてしまった可能性があると考えられます。
しかし、5歳の時点での発達の遅れは、今後の支援で挽回が可能な範囲内です。感染対策と合わせて、子どもに必要な交流や支援の機会が与えられることがのぞまれます。
参考URL
『京都新聞』
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/1064614
https://www.city.sakai.lg.jp/kosodate/kyoiku/gakko/youjikyouiku_center/youjikyouikukarikyuramu.files/07-4.pdf
- MR(医薬情報担当者):編集部スタッフ:古谷祥子