ハウスダストにクルミが含まれている⁈生活環境とアレルギーの関係とは
食物アレルギーを持つ子どもの数は年々増えていますが、その中でもクルミアレルギーの患者数が急増していることをご存知でしょうか?
クルミは摂取する機会が少ないものの、強いアレルギー反応を起こすことが多く、注意すべきアレルゲンの1つです。
そこで今回は、家庭内のホコリの中にクルミアレルゲンが含まれていたという国立成育医療研究センターの報告と共に、生活環境と食物アレルギーの関係についてご紹介します。
患者増により食物アレルギーの義務表示対象品目に追加
食物アレルギーと言えば、鶏卵や小麦、牛乳の3大食材が代表的です。続いて、ピーナッツや果物、魚卵や甲殻類などがアレルギー症状を引き起こしやすい食材として知られています。
しかし、2018年頃からナッツ類をアレルゲンとする食物アレルギーを有する患者数が急激に増え、ナッツの中でもクルミが原因でショック症状を引き起こす症例が増加しました。
こうした背景を受けて、令和5年3月からは食品表示基準が改正され、表示が義務付けられる特定原材料の品目にクルミが追加されています。
- 必ず表示される8品目
(特定原材料) - えび、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生(ピーナッツ)
最近はナッツ類のアレルギーに対する認識が広まっているため、子どもには進んでナッツ類を食べさせないという親御さんも多いです。
しかし、注意はしていてもクッキーなどのお菓子に入っているクルミに気が付かないまま食べてしまい、アレルギーを発症するというケースが少なくありません。
ナッツ類は少量摂取しただけでも強いアレルギー反応が出るため、疑わしい症状が表れた場合はすぐに医療機関を受診しましょう。
ハウスダストに含まれるクルミがアレルギーを誘発
クルミアレルギーの場合、直接的な原因となるクルミを除去することが必要です。国立成育医療研究センターの研究によると、家庭内のハウスダストの中にもクルミアレルゲンが含まれていることが明らかになりました。
具体的には、同センターのアレルギーセンターの外来を受診した子どもの内、食物アレルギーを持つ子どもがいる32家庭と、食物アレルギーのない子ども13家庭を対象に自宅のホコリを採取。中に含まれるクルミアレルゲンの量を測定しました。
その結果、約3分の1の家庭のホコリから環境アレルゲンとしてクルミアレルゲンが高レベルで検出され、クルミを週に4g以上食べる家庭の方が、食べない家庭よりもホコリに含まれるクルミアレルゲンの量が明らかに多いということが分かりました。
また、クルミ由来の主要アレルゲン蛋白質であるJug r 1に対する反応が陰性だった子どもの家庭からはクルミアレルゲンは検出されず、陽性だった子どもの半数の家庭からはクルミアレルゲンが検出されています。
つまり、家庭内のホコリにはクルミアレルゲンが存在しており、子どものアレルギーの有無と関係している可能性があると言えるでしょう。子どもの食物アレルギーを予防するためにも、今後さらなる研究が望まれます。
参考URL
『メディカルトリビューン』https://medical-tribune.co.jp/news/2023/0718557562/
『消費者庁』
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/assets/food_labeling_cms204_230309_03.pdf
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/meeting_materials/assets/food_labeling_cms204_210217_03.pdf
- MR(医薬情報担当者):編集部スタッフ:古谷祥子