先進国では子宮頸がんは珍しい病気!?~日本が遅れている理由と現状~
子宮頸がんのワクチンであるHPVワクチンの定期接種化が再開されてから2年が経ちます。しかし、2013年に積極的接種推奨が中止されたイメージが根強く残っており、正しい情報を知らないまま接種時期を逃している人も少なくありません。
その結果、日本における子宮頸がんの罹患者数や死亡者数は右肩上がりの状態です。
一方で、HPVワクチンの接種が積極的に実施されている先進国では、子宮頸がん自体が珍しい病気となっており、罹患者数は減少しています。
今回は、HPVワクチン接種に関する日本の現状についてご紹介します。
子宮頸がんは唯一ワクチンで予防できる「がん」
日本では、年間約1万1,000人が子宮頸がんに罹患しており、約2,900人が亡くなっています。30代後半~40代の若い世代で発症しやすく、他のがんよりも患者層が若年化している状態です。
また、最近では妊娠や出産の年齢が遅くなっていることもあり、妊娠をきっかけに子宮頸がんが判明したり、妊娠を望んだタイミングで子宮頸がんが見つかって子宮を摘出したりと、より厳しい状況を強いられる患者も少なくありません。
このように、子宮頸がんは女性の人生そのものを大きく変えてしまう恐ろしい病気ですが、がんの中で唯一、ワクチンで予防できる病気です。
しかしながら、そのワクチン接種については認知度が低く、正しい情報が周知されていない状況が続いています。
実際、2023年に厚生労働省が接種対象者に行ったアンケート調査によると、約53%がキャッチアップ接種を含めたワクチンに関する情報を知らないという結果でした。
これは、ワクチン接種や検診が当たり前になっている他の先進国にくらべると、非常に遅れている状態であると言えます。
「知らなかった」「打てばよかった」をなくすために
日本の子宮頸がんとワクチン接種における現状を打開するため、千葉県では産婦人科医学会を中心に「ちばHPV zeroプロジェクト」を発足しました。
トップダウンの情報発信ではなく、地域の医師や行政、政治家も巻き込んで県全体で子宮頸がんの正しい知識の啓発と接種の実施を行っています。
具体的な取り組みは以下のとおりです。
- ・キャッチアップ世代となる高校生用のポスターを作成し、県内の全ての高校に配布。生徒のタブレットにも配信した。
- ・行政や医師会へのプロジェクトの周知、政治家を含めた全関係者への勉強会や講演会の実施
- ・接種する医療機関が相談できる窓口の設置や接種者の情報提供用の専用フォーマットを作成。
また、HPVワクチンは副反応を不安視する人が多いですが、現在ではワクチンとの因果関係はないと証明されていません。しかし、「接種後有症状」という定義で接種部位の腫れや疼痛がおきた場合は、接種した医療機関に相談するようになっています。
こうした取り組みにより、千葉県ではHPVワクチンの接種者数が増加しています。
将来的な出産自体は本人の自由ですが、ワクチンを接種しなかったから「産めない」という未来を子ども達に迎えてほしくはありません。
ぜひ今一度、HPVワクチンについて考える機会を作ってみてはいかがでしょうか。
参考URL
『メディカルトリビューン』
https://medical-tribune.co.jp/rensai/2024/0530563060/
『厚生労働省』
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/001128683.pdf
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/index.html
『シルガード®9を接種された方(保護者の方)へ MSD株式会社』
https://www.msdconnect.jp/wp-content/uploads/sites/5/2021/03/patient_silgard9.pdf
- MR(医薬情報担当者):編集部スタッフ:古谷祥子