知っていますか?~5歳児健診の意義とは~
日本では、3歳児健診や小学校入学前の就学時健診が一般的に行われていますが、近年は「5歳児健診」にも注目が集まっています。しかし、その存在は十分に浸透しておらず、実施する自治体も少ないのが現状です。
そこで今回は、就学時健診と5歳児健診の違いに焦点を当てながら、5歳児健診の重要性と課題について解説します。
5歳児健診の意義と重要性
5歳という年齢は、言葉の理解や社会性が発達する時期であると同時に、発達障害を発見しやすい時期とされています。このタイミングで健診を行うことで、子どもの特性を早期に発見し、より早いタイミングで適切な支援を提供することができます。
また、3歳児健診では学習障害を見つけるのが難しいとされているため、5歳は「軽度発達障害の早期発見に最適な年齢」とされています。実際に、アメリカでは「well-child visit」、ドイツでは「U健診」といった健診が3歳以降も定期的に行われており、こうした海外の動きが日本の5歳児健診の導入に影響を与えていると言えます。
5歳児健診の実施状況と課題
5歳の誕生日を迎えた子どもを対象に行われる5歳児健診は、就学前健診よりも一人ひとりの発達を細かく評価することが可能です。
自治体によっては、子どもの選定方法や健診の形式は異なりますが、実際に実施している自治体は少なく、財政的な問題や専門医療機関の不足が課題となっています。
もちろん、国は5歳児健診の必要性を認めているため財政支援を行っていますが、十分とは言えず、社会全体に5歳児健診の意義が十分に伝わっていない点も問題と言えるでしょう。
5歳児健診の実施拡大と浸透が必要
5歳児健診では、身長や体重の測定、栄養状態の評価に加えて、発達の確認が行われます。具体的には、会話能力や物の使い方を尋ねる質問、じゃんけんやしりとり、片足立ちなどの動作確認を通じて、発達障害の可能性を探ります。
その結果、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害などが発見されるだけでなく、最近問題視されているゲームやインターネット依存状態の子どもについても早期に対処できることがあります。
このように、5歳児健診という形で小学校入学前に子どもの特性に気づく機会を設けることにより、専門機関でより早期に適切な支援を受けることが可能です。
しかし、現時点ではフォローアップ体制や保護者の方への情報提供の不足など、解決すべき課題も多くあるため、今後はさらに5歳児健診の意義を社会に広く伝え、理解を深めることが求められます。
参考URL
『ヨミドクター』
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20240621-OYTET50000/?catname=column_sakamoto-masahiko2
『5歳児健康診査マニュアル_日本小児科医会』
https://www.jpa-web.org/dcms_media/other/5%E6%AD%B3%E5%85%90%E5%81%A5%E8%A8%BA%E3%83%9E%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%82%A2%E3%83%AB.pdf
- MR(医薬情報担当者):編集部スタッフ:古谷祥子