アトピー性皮膚炎の新薬に期待できること〜乳幼児への使用について〜
アトピー性皮膚炎に悩む子どもの数は年々増えています。保健所や学校健診における医師の診断に基づく全国規模の調査によると、乳幼児の罹患率は1割程度にのぼり、増加傾向が続いている状況です。
一方で、アトピー性皮膚炎の治療も変化してきています。
そこで今回は、新たなアトピー性皮膚炎治療薬についてご紹介します。
アトピー性皮膚炎がほかのアレルギーにトリガーに
アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能が低下して外部刺激を受けやすくなることで、皮膚が痒みなどの炎症を起こす病気です。
かゆみのために皮膚を引っ掻いて傷ができると、さらに肌のバリア機能が低下し、アレルゲンなどの外部因子が侵入しやすくなるという悪循環に陥ります。
また、アトピー性皮膚炎は、他のアレルギー疾患を引き起こすトリガーであるとも言われています。特に乳幼児の場合は、アトピー性皮膚炎の発症をきっかけに、食物アレルギーや喘息などに次々とかかるアレルギーマーチをたどる可能性も少なくありません。
したがって、まずはアトピー性皮膚炎を発症しないこと、もしくは、発症後は重症化させないことが大切です。
従来のアトピー性皮膚炎の治療法
アトピー性皮膚炎の基本治療は次の3つとされています。
- ⑴ステロイドなどの外用薬による薬物治療
- ⑵清潔な肌を保湿する毎日のスキンケア
- ⑶部屋の清掃や服装の工夫など
乳児期のアトピー性皮膚炎は、塗り薬だけでも治療効果は高いと言われています。しかし、その後は子どもの活動範囲も広がり、日焼けや汗などの悪化因子を完全に取り除くことが難しいため、幼児期以降は症状が悪化するケースも少なくありません。
また、患者さんの中には、治療薬であるステロイド薬に抵抗感を持ち、医師が指導した量よりも少量を塗るというケースもあります。しかし、適量を塗らなければ効果が十分に得られないため、見た目の炎症が治まっていても指定された通りステロイド薬を塗ることが大切です。
コントロール困難なアトピー性皮膚炎の次の一手
アトピー性皮膚炎の新たな治療薬の一つであるデュピルマブは、皮膚の炎症やかゆみを引き起こす物質をブロックする作用がある薬です。皮下注射により投与する点が従来の治療薬と異なりますが、生後6ヵ月以上の子どもも適用可能になったことで、小児のアトピー性皮膚炎の治療が大きく変化したと言われています。
「既存の治療法で効果が得られない」「中等症以上の炎症がある」など適用には条件があり、費用や注射剤に対する子どもの不安感などの壁もあります。
しかし、なかなか改善が見られないアトピー性皮膚炎で苦しむ子ども達の次の一手として、期待できる治療法と言えるでしょう。
参考URL
『時事メディカル』https://medical.jiji.com/topics/3541
- MR(医薬情報担当者):編集部スタッフ:古谷祥子