2歳までに発達・形成される「愛着」とは?〜ジョン・ボウルビィによる愛着理論〜
将来に影響を及ぼす、愛着関係について
愛着理論とは、1960年代にジョン・ボルヴィと言う心理学者によって提唱され、のちにメアリー・エインズワースなどによってより詳しく体系化された、人と人との親密さを表現するための愛着行動についての理論です。
例えばシマウマは生まれ落ちた時点で立ち上がり、走ることができます。敵が来ても親と一緒に逃げることができる防衛術を生まれながらにして持っているのです。
しかし、生まれたばかりの人間の赤ちゃんには自分を守る術が全くありません。敵が来ても追い返すことはできませんし、走って逃げることもできません。そんな中で赤ちゃんが唯一自分を守るためにできることがあります。
それが「愛着行動」です。「愛着行動」とは、もっとも身近にいる母親(父親)に好かれるような行動をすることによって、自分を守ってもらうという本能的な行動を指します。
ここでの「愛着」は、赤ちゃんの成長に大きく影響を与え、その後の人生に生涯にわたって影響を及ぼすと言われています。
そもそも「愛着」とは?
学生時代、長く使った筆箱や消しゴムを捨てられなくてずっと引き出しにしまって持っている、小さな頃から一緒に寝ていたぬいぐるみ、ボロボロになったけれどなぜか捨てられない。この感情が「愛着」によるものだと思われます。
「愛着」には人の行動や考え方にまで影響を及ぼす強い力があります。
例えを物で示しましたが、これと同じ感情が人間の間にも発生します。
ここでいう「愛着」とは、対象者に自分を大切な存在だと認めさせて、自分を守ってあげたくさせるための感情のことを言います。
なぜ「愛着」が必要?
愛着行動はすべての人のDNAに刻まれて本能として持っています。なぜなら、第一に自分を守ってもらわなければいけないからです。
そして2つ目の理由は、「愛着」を通して大人と良好な関係を結ぶことで、脳を発達させて成長させるためです。
人間の脳、神経は、安心や安全、心地よさを感じる環境で大きく成長するといわれています。親との信頼関係が十分に結ばれていたら、他人を信頼できる社会性に富んだ大人に成長できます。
その逆もしかりで、脳が爆発的に成長する3歳までに赤ちゃんと親との信頼関係が十分に築かれなければ、脳の発達に遅れが生じることがあります。
さらに、「自分は価値がないし、他人も信頼できない」といった考えを持つようになる可能性も確認されています。
愛着行動とはどんな行動?
では、実際に幼児が行う愛着行動とはどのようなものでしょうか。
これは、養育者を引きつける行動と、自分から近づく2種類の行動があります。
養育者を引きつける行動:ほほ笑む、泣く
養育者に近づく行動:後追いする、抱きつく、しがみつく
身近にいる少数の人のみに愛着を示す傾向があり、外部のものには逆に不信感や、拒否を示すことが多いです。
つまり、誰彼構わずに愛着を振りまいているわけではなく、特定の(おもに母親など)少数人に対して愛着行動を見せます。
赤ちゃんに近づくと笑いかけてきたり、指を掴まれたりといったことはありませんか。0〜12週の赤ちゃんはすべての人に対し愛着を示しますが、成長とともにその傾向はなくなります。
また母親の元では笑顔ですが、ふと母親の姿が見えなくなると泣いてしまうというのも愛着行動の一つです。
自分だけを特別に好いてくれているとわかれば、誰しも嬉しくなるのではないでしょうか。
愛着が将来の人間関係にも影響
十分に愛情を受けて育った赤ちゃんは、
○ 大人の価値観や考え方を理解でき、お手本や、自分のものにする
○ 他人に共感し、同情ができる
○ 自分に自信を持って行動できる
○ 自分を律することができる
「自分を守ってくれるから、この人は信頼できる」=「自分は守られる価値のある人間だ」=「周りの人間は信頼するに足りる存在だ」
このように社会的な行動がとれるよう成長すると言われています。
一方育児放棄やネグレクトなどによって十分な愛情を受けられなかった赤ちゃんは、
○ 無力感を感じる
○ 大人を信頼できない
「守ってくれないから信頼できない」=「自分は価値のない人間だ」=「周りの人間は誰も信頼できない」
このように否定的な考え方を持ってしまうことが研究されています。
まとめ
何気なく見ていた赤ちゃんの微笑ましい行動の裏側にどういう意味があったのかを知ることができたと思います。さらに、心の生育に家族との関係がいかに大切かがわかりました。
赤ちゃんは生まれてきてから親を選べません。一度命を授かったら、精一杯の愛情を注いであげたいですね。
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※本コーナーは医師、管理栄養士、保育士など各分野の専門家に監修をいただいております。ただし、幼児期の発達・発育状態、心理状態には個人差がございますので、全てのお子様への該当を保証するものではございません。
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