- 監修:小田原短期大学特任講師 鈴木邦明
幼児期に運動は必要?幼児期の運動指針について
幼児期に本当に運動は必要なのか?
幼児期の運動は大切であると良く言われています。また、近年は子どもの体力低下なども指摘されています。
その理由などを改めて考えてみたいと思います。
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幼児期の運動の減少の理由は?
幼児期の運動に関して、まず考えなければならないものが「環境の変化」です。その中でも、特に3つの「間」の減少が指摘されています。
それらは「仲間」「時間」「空間」の3つです。
子どもに関わる人たちは、この3つの「間」の確保を意識しながら子どもと接することが望まれます。そのためには「環境の工夫」が大切になります。
運動のための「環境の工夫」とは?
「環境の工夫」とは、幼児が自発的に体を動かしたくなるような工夫をすることです。
幼児が遊び出したくなるようなきっかけ作りを大人がしていくことで、幼児が自然と体を動かし、遊ぶようになっていきます。
先程も書いたように子どもを取り巻く3つの「間」の減少が体を使った遊びをやりにくくしています。大人の働きかけがこれまで以上に重要となってきています。
また、家庭においては、幼稚園・保育所などでの運動遊びが一過性のものとならないようにすることも大切です。幼稚園・保育所などと違い、家庭ではスペースや道具などに制限があります。公園を上手に利用することや狭い空間でもできる親子で触れ合う運動遊びをしていくことなどが望まれます。
幼稚園・保育所などと異なり、家庭ではその子どもに合った対応が可能です。子どもの発達の状況や興味などによって、やり方を変えていくことで、さらに子どもの育ちが期待できます。
幼児の運動は「多様性」が大事!
幼児期の運動において大事なことは「多様性」です。
幼児期には、様々な運動を経験するということが大事だとされています。
子どもの育ちにおいて、ある特定の時期に特に能力が伸びるということがあります。運動能力にもそういったものがあります。
運動指導における「ゴールデンエイジ」という考え方です。
ゴールデンエイジにおける能力の獲得について
「ゴールデンエイジ」とは、成長において特に能力が伸びる時期で、サッカーなどではスキルの獲得に最適な時期だとされています。
スキャモンの発育曲線(※1)によると、脳や脊髄、視覚器などの神経系や感覚器系の成長を示した神経型の発育は、10歳位までに90%が獲得されます。
※1 スキャモンの発育曲線とは、人間の成長の様子を4つに分類して表したものです。一般系(骨や筋肉)、神経系、リンパ系、生殖系の4つです。それらは同じ様に成長するのではなく、それぞれで発達の時期が違っています。
幼児期を含む「プレゴールデンエイジ(3~8歳)」は、運動における多様な動作を経験し、運動動作の基本的なものを身に付けておく時期だとされています。
文部科学省が出している幼児期運動指針にも「多様な動きが体験できるように様々な遊びを取り入れること」とされています。
様々な運動刺激を与えることによって、体の中に複数の神経回路を張り巡らせていくことが大事になります。
おすすめの遊びは、鬼ごっこ
具体的な例では「鬼ごっこ」です。
鬼ごっこは非常に多様な動きを含んでいます。走る、止まる、向きを変える、かわす、飛ぶなどです。
鬼ごっこでは、そういった様々な動きを楽しみながら経験していくことができるため、体の様々な部分の成長に良い影響を与えます。
「楽しさ」を感じれば、遊びが広がる
幼児期の運動においてもう一つ大事なことは「楽しさ」です。
最新の研究では「大人になってから日常的に運動をしている人は、子ども時代に運動を楽しいと感じている人が多かった」というものがあります。
子ども時代に運動を楽しいと思うことができた人は、大人になってからも運動に取り組み、逆に子ども時代に運動が嫌だった人は大人になってから運動に取り組まない傾向があるということです。
子どもの時代の運動好意感(楽しいと感じるか)と大人になってからの運動経験に非常に強い関連が示されています。
もちろん、大人が健康的な生活を送るためには、日常的な運動が望ましいことは数多くの研究で示されています。
現在の日本は、高齢化社会と言われており、単に寿命を伸ばすことだけではなく、いかに健康寿命を伸ばしていくのかという事が大切になっています。
幼児期の運動経験、特にその時に感じる「楽しさ」が、大人になってからの運動経験に影響を与えています。そして、それらが最終的に健康寿命にも関係をしてくるということです。
「三つ子の魂百まで」という諺ではありませんが、幼児期のライフスタイルがその人の生涯に与える影響は大きいです。
幼児期の子どもがどの様に運動に関わるかという事が、その人の生涯の生活の質に影響を与え、介護や福祉にも大きく関わっています。
改めて、幼児期の運動について見つめ直すことができたらと思います。
参考文献:文部科学省 幼児期運動指針
http://www.mext.go.jp/a_menu/sports/undousisin/1319771.htm
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※本コーナーは医師、管理栄養士、保育士など各分野の専門家に監修をいただいております。ただし、幼児期の発達・発育状態、心理状態には個人差がございますので、全てのお子様への該当を保証するものではございません。
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