宮里藍プロフィール
沖縄の大自然が育んだ、彼女の心や感性の『強さ』
( Photo by (c)Tomo.Yun )(http://www.yunphoto.net)
「彼女が小学校2年生のとき、ジュニア大会に出るというので、『藍チャン、ゴルフスパイク持っているのか』と聞くと、恥ずかしそうに下を向いていた。足元はいつものシューズだったから、ゴルフ場の倉庫に女子用のスパイクがあったのを思い出して、『ほら、やるよ』と、渡したら、すごく喜んでいてね。あのときの笑顔は忘れないよ。
プレゼントしたスパイクは女子用の一番小さいサイズだったけど、藍チャンにはまだ大きかった。靴下を2枚重ねて履いてもブカブカ。グリーン場上を歩く藍チャンを見て、『スパイクだけが歩いているよ』と、お父さんの優さんと大笑いしたほどでした」
懐かしそうに語るのは、宮里兄妹がよく通っていたゴルフ場・ベルビーチゴルフの元副支配人、金城豊さん。金城さんは全国に先駆け、ベルビーチゴルフ場をジュニア育成とゴルフ人口の底辺拡大のために小学生にも開放した。
この金城さんの取り組みと、小学生だった宮里藍が、見事にリンクした。
「いつもゴルフ練習場だったからか、コースをまわるのが、本当にうれしそうにしていましたね」
当時、小学生がゴルフをするなんて──と、ゴルフ場にくるメンバーのなかには、宮里藍たちのことを訝しがる人もいたという。
「でもね、藍チャンたちは、すごくマナーが良かった。プレイが終わったら、帽子を脱いで、ありがとうございました、と、スタッフ、メンバー、会う人すべてに挨拶をしていた。
そんなこともあり、しばらくすると、みんなに受け入れられた。
とくに藍チャンは、ゴルフ場を使わせてもらっている感謝の気持ちをすごく持っていた。ゴルフカートを使っても、最後は洗って返していたし、進んでゴルフ場の仕事もしていた」
ゴルフとはマナーが重視されるスポーツだ。ゴルフ規則の最初に出てくる項目は、エチケットだ。
父親の優さんは、ゴルフの技術的なことでは怒ることはしない。
しかし、マナーや躾には厳しかったという。そこには“ゴルフバカになるな”という、優さんの徹底した教えがある。
さらにかつてのインタビューで、優さんは、『技術的に上り詰めたプロの世界では、最終的には“人格勝負”になる。人間的な幅を持ったスポーツマンになること。そのため、子供たちには読書を奨励し、映画や音楽を鑑賞させて感性を磨かせたつもりです』(週刊ポスト05年4月1日号)と、語っている。
取材でベルビーチゴルフ場を訪れた日は、音をたてた風が吹き、椰子の葉を揺らしていた。ゴルファーにとって風は、敵でもある。
「いや、あそこは、海に面しているから、年中、風が吹いているんです。しかも、海からの風だから塩気を含んで重い。でも、藍チャンは、そんな風が好き。とくに強い風が吹いていたら、嬉々として、コースに出て行く。小さいときから、この強い風でプレイしていたから、風と仲良くするためにはどうすればいいか、よく知っているんですよ」と、金城さんが語ってくれた。
海からの強い風、そして自宅近くの赤土のグランド──。決してゴルフ環境に恵まれていたわけではない。
しかし、プロゴルファー宮里藍の根底にある沖縄の風土に触れてみて、彼女の『強さ』をあらためて実感した。それはゴルフの技術的なことではなく、沖縄の大自然が育んだ、彼女の心や感性の『強さ』だった。
そして、彼女を支える沖縄の人々の熱い思いを抱き、いま宮里藍は、世界に向けて歩き出した。
インタビュー目次
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