瀬古利彦プロフィール

悩みを自分の中にしまっていてはいけない

のっぽくん

そんな先生の指導の下で、瀬古さんは数々の国際的な舞台で記録や優勝歴を重ねていきます。

米田さん

「でも、勝てば勝つほど、逆にプレッシャーになっていくんです。「次の大会では、僕が負けてしまうんじゃないか……」と想像するようになってしまったり。 だから、あまり勝ちすぎるのは、恐い。実際、マラソンを走るのが恐くなった時期もありました。だからと言って、マラソンというのはひとりだけで走っているわけではありませんから。家族も、監督も、チームメイトもそばにいるわけですからね。 もちろん、人には言えない悩みを抱えた時期もありましたけど、結局は母に相談して救われた気持ちになったり。……やっぱり、重要なのは人と話すことですね。自分の中で溜めるようなことをしてはいけない。でも、なかなか監督には言えないんですよね、本音は（笑）。」

のっぽくん

「はい」とだけ答えると決めてしまったわけですしね。

米田さん

「そばに本音を話せる（心を許せる）相手がほしかった。だから、「僕には結婚しかない」と思ってたんですよ。結婚だったらさすがの監督も許してくれるだろうと思ったから。 でも、僕が見合い結婚を決めると、その後すぐに中村監督が事故で亡くなってしまって。実は婚約をしてすぐの頃、家内がよく監督に呼ばれて「競技者の嫁とはこういうものだ」という話を聞かされていたみたいなんです。 そういうことがあった後だったので、監督が亡くなったというのは、「もう、私から瀬古に伝えることは何もない」というメッセージだったのかな、と思ったりするんです。うちの奥さんに、僕の世話係をバトンタッチしたというか。」