思春期のダイエットの危険性!「太る」のは本当に問題なの?
思春期の女の子の間では、ダイエットの話題がよくでます。モデルのようなきれいなスタイルは憧れです。
思春期は、自分のことを必要以上に意識したり、人と自分を比べて優劣をつけたくなる時期です。そのため、“あの子はきれいなのに…”“私は劣っている”と劣等感を強くすることもあるかもしれません。
ただ、このダイエット、気をつけないと取り返しのつかないことになるのです。
ダイエットのことを、もう少し詳しくお話ししますね。
思春期の過度なダイエットがもたらす怖いこと
思春期になると、体も大人への準備を始めます。女性ホルモンも増え、皮下脂肪も増してきて太ったように思うかもしれません。中には、すでに痩せている子までダイエットをしている場合もあります。
必要のないダイエットは大変危険です。次のような怖い事態が待っています。
生理がこなくなる - 生理不順(無月経)
体重や脂肪率が低くなってしまうと生理不順が起きやすくなります。生理が遅れたり、ひどいと数カ月も生理が止まってしまうこともあります。
ダイエットで栄養が足りなくなると、生殖機能である卵巣まで栄養がいかず、正常に排卵しなくなります。将来、赤ちゃんが欲しいと思ってもなかなかできないという不妊症に悩む原因になるのです。
また、この無月経には大きな問題が。実は、無月経は「骨密度」に大きな影響を与えます。
女性ホルモンの一つである「エストロゲン」は骨の形成に関与する大切なホルモンです。月経が止まるということは、この女性ホルモンのバランスが崩れているということを意味します。
つまりは、上手に骨の形成が行われずスカスカな骨の状態になってしまいかねません。
「骨密度」は、残念ながら20歳前後をピークに減少の一途をたどってしまいます(最大骨量、ピークボーンますといいます)。だから、「骨密度」を高められる成長期に無月経にならないよう、気をつけなければいけないのです。
食べることが恐怖! - 摂食障害(拒食症、過食症)
思春期は、学校や勉強の悩みがストレスとなって食欲にも影響することが多い時期です。それに加えてダイエットをすると、拒食症(=食べることができなくなる)や過食症(=食べることをやめられない)といった摂食障害に発展する可能性が高まります。
摂食障害は死にもつながる大変怖い障害です。低血圧や様々な病気を併発するだけでなく、深刻なうつにつながります。病院での治療や入院が必要になるケースも多く、ダイエットを簡単に考えてはいけません。
骨や筋肉が育たない!
ダイエットで栄養が不足すると、体の成長がストップしてしまいます。特に気にする人が多い“身長”。この時期を逃したら伸びなくなってしまいます。
カルシウムが不足すれば骨の成長がとまり、骨密度が低下する恐れもあります。
とくにカルシウムは、日常の食生活においても不足しがちというデータが厚生労働省より発表されていますので、ダイエットなどで食事制限をすることで、より一層必要量が確保できない危険性があります。
血液や筋肉を作るのも栄養から。血液が十分にできないと貧血になりますし、筋肉が育たなければ日常的に疲れやすい、集中できないなどのトラブルがでてきます。
美に悪影響が!
外見を気にするばかりにダイエットで栄養が不足すると、必要な脂質やたんぱく質が足りなくなり、肌がボロボロになります。爪や髪の毛はたんぱく質でできているので、抜け毛の原因になったり、パサパサと潤いのないものになってしまうのです。
ホルモンバランスが崩れたために、毛深くなったというのもよくある話です。
本当にダイエットが必要なのか?
周囲でダイエットをしている友達がいれば、自分もやってみたくなりますよね。雑誌やテレビでは、アイドルやモデルが真似したくなる服装やヘアスタイルで活躍しています。憧れの人がスリムだと、自分もそうなりたい!と思って、ダイエットをはじめるきっかけとなるかもしれません。
スリムな体がかっこいいという風潮がありますが、思春期の女の子には適したものではありません。先にもお伝えしたように、必死になって痩せたところで、体には大きな影響がでてしまうのです。
今のままで十分に可愛らしいこと、今がどれほど魅力的かを再認識できるようになるのも大人への一歩ですよ。
ダイエットをするなら栄養摂取には手を抜かない!
それでも、どうしてもダイエットをしたい!という女の子もいるでしょう。そのような場合は、決して間違ったダイエットをしてはいけません。
特に食事を抜くというのは危険です。食事は生活の源です。学校生活を送るのも、遊ぶのも、美しくなるのも、すべて食事からということをよく理解してください。
一流のモデルは、食事や運動をきちんと管理してスリムを維持しています。単に食事を減らしているのではなく、カロリー計算や栄養素のバランスを専門家に指導してもらっているのです。逆に、素人が我流のダイエットをしても効果的ではありません。
ダイエットをどうしてもしたいという場合は、3食バランスの良い食事をとりつつ、運動を取り入れるなど、健康的なプランでやってみてくださいね!
医師、医学アドバイザー 橋本佳子プロフィール
久留米大学医学部卒業、内分泌代謝内科学講座入局。幼少期に母親がI型糖尿病を発症。父親とともに長年に渡る闘病生活を支え続けた経験から、心と体の繋がりについて深く学び、医学的な治療方法だけでなく、心との向き合い方について幅広い視点からアドバイスを行っている。 【経歴】:医療法人水聖会メディカルスキャニング浜松町にて院長を務めたのち、東京医科大学病院にて糖尿病内科医として勤務。現在は、ピュアライフメディカルクリニックにて治療に携わっている。