思春期の心理-心の変化やうつ、不安について
思春期に入った子どもとの接し方は難しい!と感じる親御様が多いのではないでしょうか。これまで以上に子どもと衝突したり、葛藤する機会が増えたという方もいると思います。これは、子どもが成長するためには重要な過程です。
思春期の子どもの心理状態を理解できれば、精神的な不安定や反抗にも落ち着いて対応できます。
今回は、思春期の心理をお伝えしていきます。
思春期は心がどう変化する?
思春期に入った子どもは、下記のような特有の変化がみられるようになります。
自立と依存に戸惑う
親の言うことをよく聞く子だったという場合も、思春期に入ると様子が変わってきます。
思春期は、子どもの交友関係が複雑化し、友達の言動から大きな影響を受け始めます。これは自分を客観視する能力が身についたことによるもので、同時に親に対しても客観的な視点でみるようになるのです。
親に干渉されると「うるさい!」と言うこともあれば、「聞いてよ~」と甘えてくるなど、子ども自身が自立と依存に葛藤する時期なのです。
視野の拡大とアイデンティティ確立
子ども同士で買い物やイベントに出かける、時事ニュースに興味をもつなど、自分で視野を広げる行動を積極的にとり始めます。外見を気にしたり、ファッションに目覚めたりするのはこのためです。
視野が広がった分、情報量も格段に増え、周りの世界をみる目も変わります。
しかし、子どもには情報過多の場合も多く、まだ答えを出すだけの知識や思考が備わっていないため、精神的には不安定な状態になります。
自意識の芽生え
思春期に入ると、体の変化が視覚的にも見えるようになります。胸のふくらみや体毛、初潮や精通など外見的な変化がさらに自分自身に意識を向かわせます。異性への関心が強くなるのもこの時期です。
「他人と自分はここが違う」「私は周囲からどう思われているのか?」など、他人と自分を比較して、自身を認識するようになります。
他人との比較や競争で劣等感や優越感を感じるなど、心理的にはストレスが多く非常に不安定になります。
子どもの不安な気持ちを理解するために
思春期の心の変化をお話ししましたが、子どもにとっては器を広げ、土台をつくるための大切な過程です。そうはいっても、親御様は心配になることも多いかもしれません。続いては、子どもの不安な気持ちを理解するためにおススメの方法をお伝えします。
思春期の子どもだった頃を振り返ってみよう!
改めて、親御様が思春期だった頃を思い出してみてください。
友達の顔、楽しんだ遊び、部活動、学校生活…
この時期は、きっと学校生活が多く思い出されることでしょう。子どもにとっては、家庭以外の環境がどれだけインパクトをもって記憶に残るかが分かると思います。
親にはどう接してほしかったか?
「親には叱られてばかりだった!」という人もいれば、「親と話した記憶が思い出せない」「親は何も言わなかった」という人もいると思います。
これは、親からは色々と干渉されたくない、話すのも億劫だという思いの表れとも言えます。そうかといって、親が全く関与しないわけではなく、要所で関わってくれたはずです。
子どもが必要とするときに、側で支えてあげられるという受け入れの心が大切です。
子どもは答えを欲しがってはいない!?
様々な物事に対して、子どもは自分なりの考えをもつようになります。その考え方がどのようなものであれ、頭ごなしに否定されたら不信感を抱きます。ただ聞いてほしい、ということも多々あります。
この時期は「対話」の重要性が言われることがありますが、対話にならなくても、落ち着いて話を聞いてあげるだけでも子どもは落ち着きます。
親は答えを知っている場合が多いので、つい教えたくなりますが、一呼吸おいてまずは子どもが話しだすのを待つ、そしてしっかり聞くというスタンスが重要です。
家庭がいつでも安心できる場所に
思春期の子どもは、大人でもないし、子どもでもないという難しい時期です。大人として成長してきた我が子を尊重して接しようと思ってもうまくいかないケースもあります。子どもの個性や家庭の事情もありますので、一概にはいえないところです。
ただ、どんな場合であっても重要だと思われることがあります。
それが、親の愛情です。
どんな逆境や困難にあっても、嬉しいときも悲しいときも必ず親が味方であるということを示すこと。これが何よりも大事です。言葉でも態度でも、愛情はどんな示し方でもいいのです。温かく見守る、子どもが接してくるのを待つといったものでもいいのです。子どもは反抗しながらも、親の愛情を感じているものです。
子どもが思い立ったときに、不安や心配、悩みや葛藤をぽろっと吐き出せるように、嬉しさや喜びをともに共感できるように、家庭は子どものすべてを受け入れるという安心の場所にしてもらいたいと思います。
医師、医学アドバイザー 橋本佳子プロフィール
久留米大学医学部卒業、内分泌代謝内科学講座入局。幼少期に母親がI型糖尿病を発症。父親とともに長年に渡る闘病生活を支え続けた経験から、心と体の繋がりについて深く学び、医学的な治療方法だけでなく、心との向き合い方について幅広い視点からアドバイスを行っている。 【経歴】:医療法人水聖会メディカルスキャニング浜松町にて院長を務めたのち、東京医科大学病院にて糖尿病内科医として勤務。現在は、ピュアライフメディカルクリニックにて治療に携わっている。