調理専門学校を卒業後、栄養士として千葉県内の市立病院に勤務。5年間病院食の献立作成や栄養管理に携わる。’08年より東京都文京区立青柳小学校に勤務。’13年には第8回全国学校給食甲子園にて優勝。同年、文京区学校給食優良校にも指定される。
学校給食の栄養士の仕事を選んだきっかけは?
「私は小学校1、2年の頃まで食事の好き嫌いが多かったんですが、あるとき栄養士の先生から「このご飯は、君のためになるものしか入ってない。だから、ゆっくりでいいから食べよう」と言われて。そのことをきっかけに少しずつ嫌いなものでも食べられるようになり、最終的には本当に心から給食が大好きになったんです。そのときのことが高校生になってからもずっと心に残っていて、進路を決めるときに担任の先生から「自分の一番好きなものになったほうがいい」というアドバイスをされたこともあり、給食に関わる仕事を考えるようになりました。 」
学校給食の栄養士の仕事の内容は?
学校内で、江戸東京野菜の栽培をする授業も行っています。
「学校給食の栄養士は「給食をつくる人」と思われがちですが、実際は調理をするのではなく、学校給食のメニューづくりや食材の管理、調理員の方への指示などを行うことが中心となります。ただ、パソコン上で物事を考えているだけではおいしい給食はつくれないので、調理の時間には自分も調理員さんと一緒に給食室の中に入って、調理の様子を見たり、お手伝いをしたりします。また、食育活動の一環として、他の先生たちと協力をしながら、江戸東京野菜などの食材を使った授業を行うこともあります。 」
栄養士の仕事の大変な点と楽しい点は?
松丸先生が子供たちを想って考案した給食(一部)
「子どもたちにとって食べやすい給食をつくるために、家では何度も試作をつくるようにしています。また、子どもたちに江戸東京野菜のような珍しい野菜を食べさせたいという気持ちから、休日を返上して農家さんの元に足を運ぶということもあります。でも、給食が好きですし、子どもたちにおいしいものを食べさせたいという気持ちが強いので、基本的には大変なことだとは思っていません。一方でこの仕事のやりがいを感じるのは、子どもたちが残さずに給食を食べてくれたとき。学校では毎日給食の残食料を測っているんですが、はじめた頃は30%と非常に量が多かったものの、現在でははるかに低くなって平均で1〜2%程度になりました。そのときは本当にうれしかったですね。 」
栄養士の仕事を通じて伝えたいことは?
「やはり「君たちの人生を作っているのは食なんだよ」ということでしょうか。体も心も、人のいろんなものを成長させてくれるのは、やはり食事の力なんです。ですから、給食を通じてその大切さや知識などをたくさん知ってほしい。その前に、まずは食べることを大好きになってほしいと思いますね。」
栄養士はどんな人に向いている仕事?
「ありきたりかもしれませんが、「料理をするのが好き」というのは大事だと思います。「栄養士さんは別に料理ができなくてもいい」「計算ができれば大丈夫」と言う人もいるかもしれませんが、おいしいものを家でつくったとき「こういうものも子どもに食べさせたいな」と思うことがたくさんあるので……。あとは、調理師さんと一緒に仕事をする際に、料理の仕方がわからないと具体的なお願いができないこともあります。そういう点においても、料理をするのが好きという人の方がこの仕事に向いていると思います。」
栄養士を目指すために、子どもの頃からやっておくべきことは?
「もし、今の学校の子どもたちに同じ質問をされたら、「毎日私のところに来て、給食のレシピをいっぱいもらっていきなさい」と言うと思います(笑)。というのも、小学生の頃、私自身が栄養士の先生のところに通って「先生、この料理を家でもお母さんにつくってもらいたいから、レシピを教えて」と聞きに行っていたんです。うちの母は料理があまり得意じゃなかったので、つくってもらうことはなかったんですが、話を聞きにいくだけでとても楽しかった記憶があります。実際、レシピを教えてもらうというのは、食事に興味を持つという意味でとても大事。ですから、身近な栄養士の先生のところへ、ぜひ話を聞きに行ってみてください。 」