妊娠前に準備するべきこと
妊活を始めたり、妊娠すると、これまでの生活を見直すことが必要になります。妊娠に必要な知識を得たり、健康管理に気をつかったりするだけでなく、治療や行動を制限するということもでてきます。ここでは、妊娠前に必要な準備について、改めて考えていきましょう。
体の準備
妊娠するということは、自分のお腹の中でもうひとつの命を育てていくということです。母体が健康であるからこそ、赤ちゃんもすくすくと健康に育つようになります。妊娠する前の健康管理が赤ちゃんや母体にどのように影響するかを見ていきます。
◆赤ちゃんへの影響
一般的には、妊娠前の不摂生が、妊娠後の赤ちゃんに悪影響を及ぼすことはあまりないと考えられています。重要なのは、これまで行ってきた不摂生を、妊娠後すぐに止めることができるかということです。 タバコ、酒、カフェインなどは依存性が強く、なかなかやめられない方もいるようです。これらは、赤ちゃんの流産や早産、発育遅延などを招く恐れがあると指摘されています。
これに加えて、酒の影響で先天異常がみられるという研究もあります。 近いうちに妊娠を考えているのであれば、少しずつ減らしていくよう心がけてみてください。
◆母体への影響
――母体の健診・不妊症の確認 最近では高齢出産や不妊症の女性が多いので、妊娠前に母体の確認をしておくことは大切です。婦人科健診は抵抗がある……という女性も多いですが、もうひとつの命を預かることは並大抵のことではありません。少なくとも、次の健診は受けておくことをおススメします。
・子宮頚がん検診
・乳がん検診
・子宮の内診(触診でできものなどの状態確認)
・超音波検査(子宮筋腫や子宮内膜症、卵巣のチェック)
・おりもの検査(カンジダやクラミジア等の感染症確認)
・血液検査(HIV、B型・C型肝炎、梅毒等の感染、風疹抗体)
――太りすぎの人・体力がない人
太りすぎの人、体力がない人は、定期的な運動をしたり、食事内容を改善して健康な母体を作っていきましょう。妊娠前から太りすぎの人は、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病のほか、出産時にトラブルを起こすリスクが高くなります。体力がない人も出産に耐えられるか心配です。早産・死産の可能性も招き兼ねないので、妊娠前から対策をとっていきましょう。
◆感染症予防
近年、妊婦の風しん感染が非常に危険だと懸念されています。妊婦が風疹にかかると、赤ちゃんの目や耳、心臓などに重い障害が現れるというものです。そのため、妊娠を希望する女性とその家族には予防接種が強く勧められています。
今はMRという、麻しん風しん混合ワクチンを扱っている医療機関が多く、摂取することで麻しん(はしか)も予防できます。ただし、ワクチン接種後2ヶ月間は妊娠を控えなければならないので、早めに接種しておく必要があります。医療機関によって費用も異なりますが、自治体によっては助成金がでる場合もあるので、事前に情報収集しておきましょう。
栄養の準備
妊娠を考えた時に、とくに意識してほしい栄養素があります。それが、『葉酸』です。
『葉酸』は、ビタミンB群の一種になります。
『葉酸』が多く含まれているのは、レバーや、枝豆、モロヘイヤ、ほうれん草、ブロッコリーといった緑黄色野菜などで、葉物に多く含まれていることから『葉酸』という名前がついています。
なぜ、葉酸が必要なの?
実は、『葉酸』は赤ちゃんの神経管閉鎖障害のリスクを一定の割合で軽減できる栄養素とされています。
そのため、厚生労働省も妊娠の一ヶ月以上前より1日400μgの葉酸摂取を推奨しており、母子手帳にも葉酸の重要性について記載がされています。
しかしながら、『葉酸』は吸収率が悪いという問題点があるため、厚生労働省では食事の他に、葉酸のサプリメントの摂取を推奨しています。
サプリメントを推奨する理由は、以下になります。
吸収率の異なる、2種類の葉酸
◆ポリグルタミン酸型
ポリグルタミン酸型は、食品に含まれる葉酸です。
◆モノグルタミン酸型
モノグルタミン酸型は、サプリメントなど、加工食品に含まれる葉酸です。
繰り返しますが、厚生労働省が推奨しているのは『モノグルタミン酸型』の葉酸です。
その理由は、ポリグルタミン酸型は体内でモノグルタミン酸型に分解されてから吸収されるため吸収率が約50%なのに対して、モノグルタミン酸型はダイレクトに吸収されるため吸収率が約85%となっているためです。
また、妊娠前・妊娠中を健康に過ごすためにもビタミン・ミネラルの摂取は欠かせません。
とくに女性は、妊娠・出産によって大量のカルシウムを消費してしまい、骨量の低下につながりますので日頃より十分なカルシウム摂取を心がけるとよいでしょう。
環境の準備
妊娠は、誰一人として同じものがないほど経過が多種多様です。時に体の変化に戸惑うこともあり、これまでの生活通りにはいかなくなることもあります。 例えば、妊娠初期に訪れる「つわり」。つわりの軽重は人それぞれで、予測がつきません。入院を要する場合や、トイレ以外は布団での生活を強いられる自宅安静、匂いに敏感になって食事を作るのが億劫になってしまうなど様々です。
妊娠初期の段階から、日常生活に支障をきたす可能性があるため、先に環境を整えておくと安心です。家族でサポートをしてくれる人に頼んでおいたり、食事を作る、買い物に行くなどを夫婦で分担するのもよいでしょう。最近では手軽に家事を外注できるので、夫婦で事前にサービスを検討することで心配やストレスを軽減することができます。
心の準備
昨今、「おめでた婚」「デキ婚」という言葉を耳にします。妊娠が簡単に成立するものと感じてしまう人も多いのではないでしょうか。しかし、妊娠は、簡単に成立するものではなく、奇跡の連続、まさに生命の神秘です。
一般的に、卵子の寿命は長くて約1日、精子の寿命は平均2~3日と言われています。排卵が起こった日が分かり、その日に夫婦関係が持てたとしても、妊娠できる確率は100%ではありません。妊娠確率は、25歳から30歳で約30%、その確率は歳を重ねるごとに低下し、40歳を超えると5%以下になると言われています。妊娠は、希望すればすぐにできるものではないのです。妊活を順調に進めるためにも、長い目でみていきましょう。
また、妊娠の後は、出産が待っています。人の親になるということは、相当な覚悟が必要です。これまで自由に行動できたものが、赤ちゃん中心に変わります。「守るべき存在」ができる、確実に守り育てていく責任と自覚も合わせて持っていきましょう。
【参考資料】 ・「母子健康手帳 副読本」公益財団法人母子衛生研究会、2015年 http://www.mcfh.or.jp/
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